さて、連載再開した「コナン」。降谷零の過去が随所に差し挟まれてますが…ああ、宮野家が「黒の組織」に取り込まれる前の幸せな風景が!幼い明美さんが。志保はエレーナさんのお腹の中。
そして「工藤新一」の件をせっつくラムのメールがバーボンに届き、と。本当に収束に入りつつあるようです。
蘭は存在しませんが(基本)蘭厳しめSSです。蘭ファンはバックプリーズ。
米花町。
組織が既に壊滅している為、僅かとはいえ以前より「休み」が多い降谷は、とある場所に来ていた。
そこはかつて「毛利探偵事務所」があった場所。
実は以前から、一人で何度か訪れていた。
それは時期がずれているだけで、毛利家が現れる可能性を考えていたからだ。どんな仮説を立てた所で検証方法がない以上、確定は出来ない。
もしも毛利家…いや蘭が近くに現れた場合、万が一にも関わりを持たないように対策を立てる必要がある。そう考えていた。
だが。
“もう大丈夫か”
もしこれ以降に蘭が現れても、後一年もすれば工藤家は渡米する。
あれ程の執着を育てるだけの時間はない。
それに彼女が振りかざしていた「幼馴染」と呼べる年齢でもないし、今は寧ろ志保の方がそう呼べるだろう。
何よりとっくに新一が「毛利蘭」の存在を切り捨てている。
この世界に彼女が存在していても、かつてと同じ立ち位置になれる事は決してない。まぁ、あの小娘は自分の立場や考え、実力を妄信し、意識せずに物事を悪い方へ悪い方へと向かわせる疫病神だったから、こちらが関わらずとも、いるだけで邪魔になる可能性も無きにしも非ず、だった。
とはいえ、最大の案件・危険事項だった組織が無くなった事だし、今日でここを訪れるのは最後になるだろう。
“少し、残念かな”
かつて安室透として関わったポアロの二人。
絵にかいたような善人だった。こう言った人達がいるからこそ、自分の仕事、日本を守るという信念や正義を持ち続けられた。
小五郎やコナンと出会った事もそうだった事は否定しないが、あの二人は基本的に血なまぐさい事件とは無関係な、本当の一般市民だったのが大きい。
“たとえ「バーボン」として潜入した場所だったとしても、貴方達は確かに「降谷零」の救いであり、癒しだった”
楽しかったのだ、本当に。
色んなメニューを考え、作るのも。
大勢の「一般市民」と触れ合うのも。
その場所と雰囲気を作ったあの二人には、心から感謝していた。偽りの姿である事に、時折罪悪感を覚える程に。
だが、降谷は二人の詳細なデータは知らない。
余り踏み込んでは巻き込む可能性が高かったから、連絡先の一つも聞かなかったし、教えなかった。日常の会話で何となく知った程度の物しか知らない。
“今は…大学生、位だったかな”
ふ、と微かな笑みが零れる。
ポアロがあった場所は、今はあのビル自体がなく、二階建てのカフェレストランが建っている。
かつての小さな未練に区切りをつけて、降谷は踵を返した。
「きゃ!?」
「すみません、いきなり振り返って…」
ぶつかった相手を見た降谷の言葉が止まった。
当然ながらあの時よりも若いが、その女性は確かに榎本梓だった。
「いえ、私こそ。少し避けて通ればよかったのに」
降谷はたった今と零した笑みとは別の種類の笑みを浮かべた。
「…ナンパしてもいいですか?」
「は…?」
滅多に見ない美形に、珍しいナンパの言葉をかけられて梓がフリーズした。
「え、でも…私みたいなフツーの女と」
貴方ならより取り見取りでしょう?そんな言外の言葉が聞こえてくるが、降谷は気にしない。
「お嫌ですか?」
にっこりと、それこそかつての「安室透」ばりの笑みを浮かべる。
この人は、「降谷零」を受け入れてくれるだろうか?
以前より、もう少しだけ踏み込んでみよう、と「勇気」を出してみる。
危険には変わりないけれど、黒の組織がないだけで相当違うと思うのです。
