この日の事は、強烈に覚えている。
手術で咽頭再建後の活舌の事。
術後は、気管切開しており喋れず。
数か月後に気管切開が終わったが、顎関固定(上下の歯を針金で縛る)で、喋れず。
それらが終わった後にやっと喋れるようになった。
だが、活舌は絶望的だった。
声も元の声ではなくなっていた。
活舌悪く、か細い声だった。
咽頭再建し、下の一部も癌の為取っている。
自分では、普通に喋っているつもりでも、全く伝わらない。
自分自身では、正しく発音していると思えるのだが、全く伝わらない。
どれだけか分からないが、か行とか他にも伝わらなかった。
入院時、看護師さんが凄かったのが、そんな活舌の自分と会話してくれた方が沢山いた。
退院後の訪問看護師さんもそうだった。
恐らく、こういう意図で言っているのだろうと補正して聞いてくれていたのだろう。
勿論聞き返される事は多々あった。
自分の思いが伝わる事がこんなにも嬉しい事だとは知らなかった。
普通すぎて、考えてもいなかった。
退院後に、親戚に電話した時、「聞き取れない」と電話を別の親戚に変わられたのは辛かった。
現実を知った気がした。
両親にも、筆談を求められていた事もあった。
話は戻って、2018年8月20日。
粗大ごみを出そうとした。
粗大ごみの連絡は、訪問看護師さんが代わりにしてくれた、業務外だと思う。
非常に助かった。
粗大ごみシールは、ホームセンターで購入する為に歩くリハビリの目的地として、自分で行った。
定員さんに、
「粗大ごみシール下さい。」
と伝えたところ。
おばちゃん店員は、
「なんて言っているのかわからん(笑)」
と。
(笑)と書いているが、笑ったニュアンスじゃなくて、声を出して笑われた。
明らかに馬鹿にしている笑い方だった。
顔は変形していて、首も真っ赤なという見た目の自分。
手振り、身振り、違う言い方などをして、必死に「粗大ごみシール」が欲しいと伝え購入する事が出来た。
定員がお客を馬鹿にしたように笑う。
定員さんは、おばちゃんだったので、思わず笑ってしまったのかも。
そうだとしても、ショックを受けた。
病気治療の副作用、合併症を笑われた。
笑われるぐらいの活舌なんだと。
外の世界での、自分を知ったきがした出来事だった。
だた、その数日後に、ほっかほっか亭に好物の豚汁を購入に行った時、
その時もおばちゃん定員だったが、非常に優しく対応され救われた。
これもまた外の世界だと思えた。
豚汁が大好きなので、食べる事は出来ないが、汁だけでも味わいたくて、購入しに行った。
この日のホームセンターでの「粗大ごみシール」での馬鹿にされたような笑い以来、
今もどのお店でも、定員さんと話さないといけない機会があるとたじろいでしまう。
その後、
「なかトーク」というアプリをスマホに
インストールした。
文字を入力すると、読み上げてくれるアプリ。
でもなんか恥ずかしくて、一度も使っていない。
それはそれで、笑われそうな気がしてしまい。
「なかトーク」というアプリを作ってくれた方には、感謝です。