胸やけは、回復する事無く続いた。
介護保険サービスで、レンタルしている介護ベット。
ベットの背もたれを上げたまま寝てみたりするが、胸やけで起きてしまう。
日中も、夜も、胸やけの症状にやられてしまっていた。
胃もたれ、胸やけに、胃薬を飲んだら、少しは楽になるのではと考えた。
訪問看護師さんに相談した。
「胸やけが苦しいので、胃薬を入れたい。」と。
看護師さんは、その場で主治医が居る大学病院に電話してくれた。
大学病院の誰と話をしたのかは分からないが、その解答は、
「胃薬では、その症状はよくなりません。」
だった。
胃薬が駄目で、他に薬などが処方される事も無かった。
それで理解した。
胸やけも、胃もたれも、病気ではなく、体が弱っていっている。
体に、栄養を欲していないんだ。
死に近づいているんだと。
脂っこい物を取っているわけでも、大量に栄養を取っている訳でもない。
経腸栄養剤 エンシュアを胃ろうから入れているだけだ。
口から食事を取れない自分。
食欲は当然ない。
激しい胸やけ、胃もたれ。
それでも、胃ろうからの栄養注入を辞めなかった。
胃ろうが無かったら、口から食事を取る昨日が残っていたとして、
食事を取れていたのかは分からない。
多分、取れていなかったかもしれない。
注入量を減らす事もしなかった。
只々、生きるのに栄養が必要である事。
その気持ちだけだった。
本能で、死を拒否していた。