病院を退院した。
自宅までは、親の車で。
後部座席で、座っている事が体力的に出来ずに、
シートベルトをせずに、横になった。
枕が無い状態が辛い。
首をドアに立てかけるようにした体勢に。
窓から見える山の緑が、綺麗に見える。
生命の力をまざまざと見せられているよう。
自宅マンション前に到着。
わずか数メートルの距離を、ふらふらと歩いた。
荷物を自分で持つことはできずに、運んで貰った。
自宅のリクライニングチェアに座り込む。
移動でクタクタだ。
そしてほどなくして、両親は帰っていた。
このような状態の息子を置いていくのは、心配でたまらなっただろう。
出来るだけ一人暮らしをしたいという事を受け入れてもらえた事に感謝。
半年近く入院しており、看護師さんが近くにいる生活から、
本当に一人の状態に。
まあ、三日後には大学病院への通院。
その日には、介護会議がある。
ケアマネジャー、訪問診療の先生、訪問看護の方、訪問介護の方たちが、
一同にそろって、介護の計画書を作る、在宅医療の環境を作るとの事。
介護保険の事に詳しくなかった自分は、なぜ介護保険が使えるのかも知らなかった。
介護保険を65歳未満が利用できる条件に、「末期がん」がある。
自分は、「末期がん」だと公的に認められて、
介護保険を利用する事が出来る。
その事を知ったのは、暫く後の事だった。
この頃、
介護保険や在宅医療について、ネットで調べる気力が無かった。
ぐったりしたまま、
在宅医療がこの日から始まった。