2人は仕事にも少しづつ慣れ、春休みも終わろうとしていました。
新学期から兄は中学1年生、僕は小学5年生になります。お互いに新しい生活と新聞配達の二足の草鞋を履いての新生活。
しかし、自転車を買うんだ!っていう目標があったので頑張れる気がしました。
新しいドロップハンドルの自転車に乗る自分を想像しながら…色は水色って決めていた。
新学期が始まり、今までなら学校が終われば近所の子供が集まって田んぼで野球をしたりして遊んでいましたが、これからは新聞配達が待っています。
僕より少し遅く帰ってくる兄を待って販売店に向かいます。
自転車に新聞を積み込み、お仕事開始!
この頃になると違う新聞店の同じエリアを配るおじさんやおばさんとも顔見知りになり、兄弟で配達している僕達に声を掛けてくれる様になっていました。
その中でも読売新聞を配るおじさんが特に気に掛けてくれた。体の大きなポッチャリとした、アンパンマンに似たおじさんでした。すれ違う度に何とも言えない笑顔で
『おおっ~頑張ってるな~』って声を掛けてくれる。いつの間にかおじさんと出会うのが楽しみなっていました。時には近くの自動販売機で一緒に休憩しようって誘ってくれ、2人にジュースをご馳走してくれたりもした。何気ない会話を交わし配達に戻る。そんな、ささやかな楽しみもあって頑張れたんだなぁと思います。
そして、やって来ました!そう、待ちに待った給料日がーーっ❗️
前日におばさんから、ハンコを持って来る様に言われてたので、その日は母にハンコを借り兄と一緒に出勤しました。
販売店までの道のりは、もうウキウキ。
楽しみというか、達成感というか、言葉では表現仕切れない気持ちでした。無意識にスキップしていてもおかしくない位でしたが、残念ながら僕はスキップができませんでした(笑)それ位、高揚してたって事です。
販売店に着くとおばさんが、
『よう頑張ったなぁ~!ほら、初めて給料やで。大事に使いや。』と、言って茶封筒を手渡してくれました。何てことない茶封筒でしたが今でも鮮明に覚えています。
『有難うございます❗️』
2人でそう言うと兄が受け取りました。
その場では封筒を開けず、新聞を積み込み配達に出掛けました。
そして、配達場所に着くと兄が
『やったな!封筒、開けてみよか!』
僕は
『うんっ、開けよ!』
糊付けされた封筒を出来るだけ綺麗に開けて、中身を確認しました。何やらお金と白い紙が入っています。その白い紙を取り出すと(給料明細)って書かれていました。
(給料明細)…うわっ~なんか大人っぽい!そんな風に感じた。そして金額を確認
すると22000円と書かれていました。
すげーっ!
僕は思わず声をあげました。
子供の2人にはとてつも無く凄い金額を手にしたのです。
少しドキドキしていた。
兄に
『ちゃんと落とさんようにポケット入れといてや、頼むで。』
『わ、分かってる。』
その後の配達に集中出来ず、給料の事が頭から離れませんでした。奇跡的に配達ミスも無く配り終えると一目散に家に帰りました。
母に『給料もろたでー』
と、玄関先で叫びました。
『凄いなぁ。よう頑張ったなぁ。明日、銀行で通帳を作ってきたるからそこに貯金すんねんで。』
給料の次は貯金通帳か!またまた大人っぽいやんかーっ!心の中で呟いた。
僕達の欲しい自転車は1台、30000円。
2台で60000円。後、2ヶ月後には買える。想像するともうテンションは最高潮に達していた。
そんな、夢の様な給料日から1ヶ月も経たないある日、思いがけない知らせが…
つづく