中央アジア巡礼行記 2023年

27 アルマトゥイ(3)

 

 今回の中央アジア旅行も終盤を迎えた。今夜にはソウル行きの飛行機に乗らなければならない。

 昨日と同じカフェ「シミット」に立ち寄り、マンティやアイランで朝食にする。

 食後、店の前にあるバス停から73番のバスに乗る。この系統はキョク・バザールのそばまで南下した後、東に方向を転じて郊外へと向かう路線である。今日の午前中は、アルマトゥイの古い面影が残るというマーラヤ・スタニツァ地区を訪れようと思う。

 

 

 中心市街地を通り過ぎた先に位置する、カザンスカヤ通りバス停で下車した。地図によればこのあたりはタタルカ地区となっている。昔からカザフ人はじめ、地元の民族が住んでいた地区なのだろう。路地を覗き込むと、ファティマの名を奉られたモスクが見えた。地区集会所といった規模であるが、敷地が綺麗に掃き清められていて清々しい。

 

 

 

 

 路地を奥へ進んでゆくと、左右は平屋の住宅が連なり、ロシア風の飾りをつけた窓枠の家も見られる。

 

 

 坂を下りカザチカ川という小川を渡った先がマーラヤ・スタニツァ地区になる。この地区は、二つの小川に挟まれた、東西約1キロメートル、南北は1.5キロメートルほどの台地上の土地である。アルマトゥイ中心部と同様に碁盤目状の街区をなしていて、その条里区画は30度ほど軸がずれている。

 

 

 

 

 地区の中心に位置するカザンスキー寺院を目指して、街角を何回も曲がって歩いてゆく。どの通りも人影がなく、小雨に濡れたアスファルトは気が滅入るように寒々しい。ところが、ある街角を曲がると、駐車場のような屋根の下に商品を並べた雑貨店が現れた。道の向かい側には食堂や薬局も並んでいる。地図を見ていただけではわからなかった、この地区の市場のようだ。

 左側の建物には他にも入口があり、ガラス扉を透かして見るとバジリカ状の空間が広がっている。ファサードには「ヴェルネンスキー」の文字が躍っていて、これがこの市場の名前らしい。

 

 

 

 

 

 中に入ってみると、野菜、果物、肉、チーズ、衣料品と、規模は小さいながらもひととおりの生活必需品はそろっていた。野菜と果物の部門では、ここもアルマ・アタだからか、リンゴがひときわ目立っていた。

 

 

 

 

 

 

 内部を一周して、横手の扉から外に出た。すると、表の広場には鳥の市場が立っていた。食肉ではなくて飼うための鳥である。籠の中にいるのはわずかな文鳥以外、ハトばかりだ。しかし、灰色の普通のハトに混じって、赤茶色の羽毛を持ったものが半分くらいはいる。こちらでは好まれる色なのだろうか。

 そして、この鳥市場は完全に男だけの空間であった。人もハトも小雨に濡れながら、いつ果てるとも知れない評定を続けているのである。

 

 

 

 

 

 金色ドームのカザンスキー寺院は、市場から路地と小さな公園を通り抜けた先にあった。日曜日の午前中だからミサの最中である。小さな堂内は参列者でいっぱいだ。

 

 

 

 

 姿は見えないけれども、聖歌隊の人数は少なめなようだ。それがかえって、和声の印象を引き立てているように感じる。

 

 

 

 

<28 アルマトゥイ(4) に続く>

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