ノースコーンウォール松葉杖行 2016年

7 ビュード

 

 ビュードはノース・コーンウォール唯一の街である。といっても人口は1万人程度、かつてはオークハンプトンから鉄道が通じていたけれども、当然ながらとうに廃線になっている。「イギリスで最もつまらない街」と評する英国人もいるほどで、海岸リゾートとしてもあまり人気がない。そんな街なのに、訪問するのは2回目である。人が少なく、のんびりできるところが気に入ったのだろう。

 

 

 

 村からビュードまでは直線距離で2キロメートルほどなので、普段なら歩いて行くところであるが、足の調子を考慮して車で出かける。街の中心部を抜けて、海べりの崖に面した駐車場に停める。3年前に来たときは無料で止められたのだが、今は駐車券が必要だ。1時間1ポンドとわかりやすい値段設定である。駐車場の料金で端数が付かないのは意外と珍しい。駐車場に隣接してアトランティック・アドヴェンチャーという大きなホテルが建っている。メンテナンスが行き届かず化け物屋敷のような外観を呈しているものの営業はしているようで、若い人たちが出入りしている。

 

 

 

 おなかが空いたので、まず昼食のクリームティーといきたい。たまたま買い物をしたミニ・スーパーで教えてもらったザ・コーヒーショップという店に行くと、窓からロッダスの旗が突き出している。この街のクリームティーはロッダスが制覇しているようだ。

 スコーンは黄色くて、粉砂糖がまぶしてあるのがコーンウォール風だ。クリームはロッダスがプラスチックの容器ごと出てきた。ビーンズつきのコーニッシュ・パスティも頼んだのでおなかが苦しくなった。

 

 

 

 

 

 

 昼食のあとは腹ごなしにお散歩。坂を下って運河沿いにでる。運河の先端は2メートル以上も高さのある水門で閉じられている。干潮の今、海面ははるか先なので、水門を開けても船は出られない。それどころか運河の水が全部流れ出てしまう。これでは船が行き来できる時間がごく限られてしまうように思える。どのみち運河用のナローボートと海を行く船は別で荷物を積み替えなければならいのだから、これで充分だったのだろうか。

 

 

 

 

 海岸へ向かうフットパスに入り丘の鞍部に差し掛かると、低い海鳴りが聞こえてきた。海岸段丘の上に立って見渡せば、さすがに大西洋で結構波が荒い。ふと見ると、足元に花束が備えられている。自殺した人がいたのだろうか。崖になっているとはいえ、土のテラスが何段もあるから、飛び降りても死ねないように思えるのだが。

 

 

 

 芝生の坂道を上り、海に突き出たエフォード・ビーコンという丘のベンチでノタノタする。はじめは南向きのベンチで、次に北向きのベンチに座って、あたたかな陽射しを体の両面で受け止める。これぞ英国旅行の醍醐味である。

 町と港を見下ろす先端には「タワー」が建っている。てっぺんに十字架がついているし2階建て程度の高さだから、塔というより礼拝堂なのかもしれない。例によって一番眺めのいい場所にベンチが据え付けられている。しかし、いつも先客(たいてい老夫婦だ)がいるので、座れたためしがない。

 

 

 

 

 コテージに帰ったら、教会前にフィッシュアンドチップスのワゴンが来ていた。村じゅうの人が買いに来たのではないかと思わせるほど、次から次へとお客が来ている。今日は金曜日、週に一度のお楽しみなのだろう。

 

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