ノースコーンウォール松葉杖行 2016年

5 クロテッドクリーム求めて南へ北へ

 

 某日、クロテッドクリームもなくなって来たので、どこかで買わなければと思う。ビレッジショップにはロッダスなら売っているけれども、できればローカルなクリームを手に入れたいところだ。同行者は「おウチにいます」とのことなので、一人で車を運転して出かけることにする。国道A39号線を南西方向に10マイルほど行ったところにカンスフォード・ファームという牧場があって、クロテッドクリームを作っているとの情報があったのでまずはそこを目指す。

 

 

 カンスフォード・ファームに着いてみると、農場としては確かに稼働していてブタや放し飼いのアヒルがいる。しかし、人間は誰もいないし、住居の建物もない。入口の看板もファーム名に続く部分を何やら塗りつぶしてある。「クロテッドクリームあります」とでも書いてあったのだろうか。

 

 

 とにかくここはあきらめて、道の先にあるボスカースル・ファームショップまで行ってみる。こちらのショップには駐車場にかなり車が停まっていて繁盛しているようだ。トレウィセンファームの200グラム入りがあったので買っておく。

 

 

 一応目的は果たしたけれど、このままコテージに帰るのも能がない。先日丘の上から眺めたウィディマスの海岸でも歩いてみることにしよう。

 町はずれの道端に車を置いて、海岸のフットパスに出る。道は砂丘の上に続いていて結構細かい起伏があるので、慎重に歩かなければならない。季節外れであっても犬を散歩させる人や、小さな子どもを連れた人など思ったより人出がある。

 海面を見やれば、今はちょうど干潮の時間帯であって、鬼の洗濯板状の岩場が露出している。そのなかに一つだけ三角形の黒い岩が飛び出しているのが、地図に書かれている「ブラックロック」だろう。家並みの前面までくると岩場が途切れて、これも干潮時だけ現れる広い砂浜になっている。こちらは「ウィディマス・サンド」だとやはり地図に書かれている。

 シャワーやカフェのある休憩所まで行き、トイレを借りて車に引き返す。往復で1時間も歩いていないのだが、充実感があった。

 

 

 

 車で町を抜けて、前方に見えていたロワー・ロングビーク岬のたもとまで行く。駐車場から先端までは平坦な道を300メートル程歩くだけなのですぐに着く。岬といっても灯台などがあるわけではないし、絶景というほどでもない。そんなところでも何組かの旅行者がいる。海から吹き付ける風だけは超一級に強く、南側を臨むとさっき歩いた「ウィディマス・サンド」や「ブラックロック」のあたりに霧状のしぶきが飛んでいるのが分かる。

 

 

 別の日、「やっぱり、ローカルなティールームにも行きたいよね」ということで、「コーニッシュ」のクロテッドクリームを出すというレクトリーファーム・ティールームを目指す。今度はA39号線を北へ行き、左に折れて海岸へと向かう。途中、ショップという名の村(もちろん店など1軒もない)を抜ける。もうすぐ着くぞと思っていると、左側の建物の壁に小さな表示があり、レクトリーファームという文字の下には右向きの矢印が書いてある。表示に従って右折し、農道のような細道を進む。ところがこの道、進むにつれてどんどん狭くなってゆき、ついには小型車でも両側面を垣根の枝先がこするような幅になってしまった。やがてマースランド・マナーという表札のかかった大きな農場の前に出たのだが、その先はどう見ても車が進めるような道ではない。なんとか切り返してさっき右折したところまで戻る。

 改めて標識を見て分かった。この矢印の意味は「ここを右折しろ」ではなくて「矢印先端のこの道を行け」つまりは、そのまま直進でよかったのだ。なんとも余計なことをしてくれたもんだと思う。

 

 

 そうしてたどり着いたレクトリーファーム・ティールームは随分と辺鄙な所にある割にはお客さんが多い。皆、コースト・パスを歩いて来たのだろうか。たいてい犬を連れている。

 

 

 今回はお昼ご飯兼用なので、クリームティーはスコーン1個のスモールにした。そのかわり、今日のスープやヴェジタブル・キッシュも注文する。カップにてんこもりのクリームは黄色くて、トレウィセンのように思う。玉子ふわふわのキッシュやサワークリームが入ってちょっとボルシチ風のトマトスープもおいしかった。

 

 

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