コーンウォールの夏休み 2012年

8 コヴェラック村のお散歩(4)  

 

 5月某日。今日はコーストパスを南へたどってみようと思う。村のメインストリート(国道B3294号)の突き当りは岬になっていて、一応ドロー・ポイントと名付けられているものの、たいして眺めは良くない。

 初日に車を停めた駐車場からホテルの脇を通り抜けてコースト・パスに入る。少し行くと右手に急な階段があって、上り詰めるとビレッジ・ホールと付属の公園になっている。海を見下ろすテラスには色とりどりの花が咲き、ベンチには日向ぼっこをするおばあさんがいて、平和そのものの眺めだ。

 

 

 ビレッジ・ホールから先へ進むと、白い家が一列に並んでいる小径に出た。何となくスペインを思わせる家並みである。道を挟んで海側が各戸のテラスとなっていて、テーブルやイスが置かれている。朝など気持ちよさそうだとは思うが、ここでご飯を食べていたら通行人からまる見えだ。一方、住戸の方は玄関脇が台所となっていて、テラス席に料理を運ぶのに便利な造りとなっている。

 

 

 白い家の一角を通り過ぎると、磯浜になった入江の上に出た。この入江は、パープリーン・コーヴと名付けられている。人工物は何ひとつ視界に入らない。振り返るとドロー・ポイントに黒い家が一軒、突き出すように建っている。この家もホリデーコテージである。

 

 

 右手の高みに視線を移せば、大きな館が目に入る。アガサ・クリスティーの推理小説の舞台にでもなりそうな建物だなと思う。

 

 

 前方の岬はシンホールス・ポイントと言い、かつては砦があったという。石垣などは見当たらないが、城門のように自然の岩がそそり立っている。

 

 

 

 

 

 

 岬の付け根を乗り越えると、眼下に磯浜が現れた。小さな男の子とそのお母さんが遊んでいる。このあたりから道は平坦となり、両側はハリエニシダなどが咲くムーア状の土地になる。ときおりトレッキング姿の人ともすれ違う。

 

 

 

 

 やがて、海に突き出した丘の上に小さな待避所が見えてくる。近寄るとナショナルトラストの銘版が取り付けられていて、ここがブラック・ヘッド・ポイントとのことである。振り返ると岬が幾重にも重なってなかなかの景色である。しかし、待避所の窓ガラスは全部なくなっているようなところなので。早々に引き返すことにする。

 

 

 帰りは海岸段丘の一段上に通じる小径をとった。シンホールス・ポイントの付け根に来ると、彫刻公園なる場所がある。彫刻と言っても黒い鉄板で作られた、巨大折鶴のような鳥の群れであるイングランド中部の財団が運営しているらしいが、なぜここに、なぜこんなものをつくったのか、意図がわからない。

 

 

 コテージに帰る前に、隣のエリザベスの店でコーニッシュ・パスティを買う。今日は適度に暖かいので、裏庭でお昼ご飯を食べようと思う。このコテージの庭は、居間の扉から外に出て階段を上がった先にある。高低差が大きい敷地だから、裏庭に立つと茅葺きの屋根が真横に来る。

 

 

 

 

 物置からデッキチェアを持ち出して、リンゴの木の下に並べる。レジャーシートも敷いてコーニッシュ・パスティをほお張る。適度な塩気で、肉料理なのにしつこさが全くなく、期待に違わずおいしい。そういえば今朝方、隣家の玄関脇にある大きなボックスに袋からどかどか黒い物を入れている人がいた。運んできたトラックには石炭商会の文字が見える。おいしさの秘密のひとつはこれだ。

 さて、食べ終わった後は、チェアでだらだらする。しかし、午後の太陽のもとではさすがに暑くなってきたので、サマーハウスに避難する。この中は風が通り抜けてとても涼しい。サマーハウスとはいえミニキッチンとシャワー・トイレが備えられてあり、巨大なクッションソファも置かれているから、ここだけでも十分生活できそうだ。

 

 

 夕方、シャワーを浴びようとするが、お湯が出ない。改めてボイラーの説明書を読み返す。どうやら電熱ヒーターのスイッチがOFFになっていたらしい。で、ONにすると騒音・振動とも大変に大きい。(ちゃんと説明書にも注意書きがある。)ボイラー室が寝室の奥にあるので、昼間のうちにお湯を沸かしておくのがよさそうだ。何しろ人の背丈ほどもある巨大なタンクを備えているので、一度沸かせば数日間はシャワーを使えるのだ。(だから、スイッチが切れていることに今まで気が付かなかったのだ。)

 逆に言えばスイッチを入れたからといって即座にお湯が沸くわけではない。サマーハウスの給湯は別系統なので、こちらのシャワーを使う。

 

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