建築と空間 イタリアの巻 1994年

15 アッシジ(1)

 

 フィレンツェを後に、アッシジへ向かう。フィレンツェ中央駅であるサンタ・マリア・ノヴェッラ駅の窓口へ行き、キロメートリコに乗車区間と距離を記入してもらう。ここでアッシジは「ア」にアクセントがあるのだと知る。

 そのアッシジは、オルビエトからは山一つ越えただけのところに位置している。しかしながら、同じウンブリア州とはいえ、両者の鉄道による連絡は悪い。だから一旦フィレンツェまで行って戻るような行程になってしまった。アッシジの後はまたフィレンツェを経由してさらに北へ向かうのだから、我ながらできの悪いプランだなと思う。

 

 サンタ・マリア・ノヴェッラ駅を出たIR列車は、高速新線をちょっとだけ走って在来線のアレッツォ駅に立ち寄った。アレッツォはかのジョルジョ・ヴァザーリの出身地だけあって旧市街には見るべきものが多い由だが、列車から見ると送電線と団地ばかりが目立つ不愛想な街にすぎない。駅に着くと「アレッツォ~、アレッツォ~」と放送が流れる。

 列車はアレッツォの先で支線に入り、湖のほとりを走った。対岸には城跡も見えている。やがて丘の上にペルージャの街並みが現れ、ペルージャ駅に着く。ここも駅の周辺は近代的なビルばかりである。ここのホームでは何やら音楽を流している。

 

 

 

 アッシジ駅に降り立つ。USCITA(出口)の飾り文字がいい味を出している。バールを併設した駅舎を出ると、丘の中腹にアッシジの街が広がっているのが望まれる。距離は2キロメートル弱とわかっているので歩き出す。

 

 

 

 

 

 駅前からは市街の一部と山上の城砦しか見えなかったが、途中からは横に広がった市街地全体が見渡せるようになった。左端にはサン・フランチェスコ聖堂が鎮座している。 航空母艦と見紛うばかりの巨大な聖堂で、聖フランチェスコのイメージにはそぐわない。街全体として建築の石材はオルビエトなどと比べると随分と白っぽい。

 

 

 旧市街に入り、まずは宿を確保する。路地の奥にある小さなホテルで、名前はあるのかもしれないが、どこにも表示されていない。フロントにも人が常駐しているわけではなく、宿泊客が勝手に鍵をとっていく。不用心なことではあるが、盗られるようなものも持ってはいないのでかまわないだろう。部屋に荷物を置き、まずは、この町で一番高いところ、ロッカ・マジョーレ城砦を目指して坂道を上がっていく。天気が良く空が青い。

 

 

 

 

 

 城砦から見渡すと、アッシジの町も周囲に城壁が築かれているのがよくわかる。ただし丘の中腹だから、ぐるりと断崖絶壁に囲まれたオルビエトほど防御性能は高くなさそうだ。

 細長い街の右手にはサン・フランチェスコ聖堂、左手にはサンタ・キアラ教会があり、街歩きの目印になる。足元に見える角塔のあたりが街の中心、コムーネ広場だろう。

 城砦を出て、街中へと彷徨い出るとしよう。

 

<16 アッシジ(2) へ続く>

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