ベトナム統一鉄道 1995年

1 サイゴン(1)

 

 

 

 ベトナムに行こうと思う。行程は単純で統一鉄道を南から北へ、途中下車はチャンパの遺跡やホイアンへの基地となるダナンと決めた。

 

 

 成田発午後の便でバンコクのドンムアン空港着。空港ターミナルから歩道橋を渡って国鉄駅に行く。道を行く車が格段に綺麗になったと思う。騒音もひどくない。

 駅前にはセブンイレブンができているので、ミネラルウオーターを仕入れる。そこらの店で夕食用にビニール袋入りのおこわや焼き鳥も買っておく。

 ファランポーン駅までの運賃5バーツ(20円)の切符を買ってホームで待つ。終着間際のこのあたりでは時刻表など無きが如しで、いつ列車が来るのか皆目わからない。

 列車から見るバンコク郊外の風景は貧し気だ。枕木を積み上げただけのホーム、切符売場は水たまりに包囲されてしまっている。線路際はスラムで塀に差掛けた小屋が続く。そんな小屋でも白黒テレビのブラウン管が光っている。

 

 翌日、再び列車でドンムアン空港に戻り、タイ国際航空のA300に乗ってサイゴンへ飛ぶ。機内食は、焼き豚をのせたヤキソバや竜眼のパイナップル巻きで、ローカル色豊かだ。

 着陸したタンソンニャット空港は、敷地は広くてもターミナルビルは小さく、荷物のターンテーブルの一端が屋外に出ているような建物であった。降ろされたスーツケースが雨に濡れて回っている。誘導路もなく、機体が滑走路端の膨らみでぐるりと回転した。

 

 

 

 路地の奥にあるゲストハウスの部屋を確保して、街歩きに出る。ベトナム建国50周年を祝う看板が目に入る。

 

 

 看板に触発されて、ホーチミン記念館に入ってみる。ここではホーチミンが神様になってしまっている。各国の指導者級の人物で、いかなる立場からも悪く言われないのは、この人と周恩来くらいではないだろうか。だからといってホーチミンの服や帽子を見ても面白いものではない。

 

 

 

 出口の近くに「越南楽器、免費入場」という部屋がある。箜篌のような形の擦弦楽器や、拍手の風で鳴らす竹でできたパンパイプ様の楽器がある。演奏を聴かせるだけでなく、体験もさせてくれる。たかが手を叩くだけといってもコツがあるらしく、自分がやってみると力いっぱい手を合わせても音が出ない。

 

 

 

 ホーチミン記念館はサイゴン川とその支流との合流点に立っている。外に出ると夕方の川風が心なしか爽やかだ。

 

 

 

 

 

 

 川に浮かぶボートで港をひと回りする。数千トン級の貨物船の間を対岸と結ぶ小舟が行き交っている。その対岸には、企業名の巨大な看板がいくつも建てられていて、毎度のことながら悪趣味だなと思う。こちらには、まだ開発が及んでいなくて湿地帯の中に水路が入り込んでいるところも見られる。

 市街地側に目を移せば、有名なサイゴン・フローティングホテルが岸辺に浮かんでいる。豪華客船のような姿を想像していたが意外と小さく、はしけに載った中層マンションといった趣である。

 

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