南アメリカ鉄道旅行で視力回復 1991年

5 ウルグアイアナ

 

ポサダスからパソ・デ・ロス・リブレスまでのバスに乗る。アルゼンチンの北東部に突き出した角のような部分を走るだけである。18時に発車して到着は24時と高速で走るにもかかわらず6時間かかる。ゆったりしたリクライニングシートなので、苦にはならない。

ときおり幹線道路を外れて町に立ち寄る。小さな町でも櫛型のプラットホームを備えたバスターミナルが整備されている。

パソ・デ・ロス・リブレスに着くと、深夜だというのに子どもの物売りがわんさと群がってくる。売っているのはタバコやお菓子である。バスターミナルに接してホテルがある。1泊15万アウストラル(2100円)と設備のわりに強気の値段設定である。

パソ・デ・ロス・リブレスとウルグアイ川を挟んだ対岸はブラジルの最南部で、ウルグアイアナという街がある。川にも街にもウルグアイとつくが、ウルグアイ東方共和国との国境は40キロメートルほども離れている。それはともかく、ウルグアイアナからは海岸に近いポルトアレグレまで、ブラジルでは残り少なくなった長距離旅客列車が週3本走っているのだ。

 

翌朝、パソ・デ・ロス・リブレスの路上でウルグアイアナ行きのバスを待つ。地元のおばさんが声を掛け、乗合タクシーで行こうという。タクシーはたちまちのうちに坂を下り線路をくぐり国境の事務所を素通りして橋を渡る。ところが対岸でも入国審査など一切なく、街の中心に降ろされた。タクシーといってもただの自家用車で、要するに白タクなのだろうから地元民しか乗っていないと思われたのかもしれない。ブラジルのビザは持っているから大丈夫だとは思うが、入国スタンプがないのは不安である。

 

 

 

スタンプの件はさておき、まず駅へ行って列車の予約をしようと思う。駅は橋と反対側の街外れにあった。コンクリート造の2階建ての駅舎は、軒先が黒ずんでいてあまり景気が良さそうには見えない。煙突状のタワーにポイントのような形のブラジル国鉄マークがついているだけで、駅名などの表示は全くない。

人影も全く見られないが駅員はいて、列車に関する情報は得られた。ダイヤが変わっていて、列車は週2便に減便の上、中間地点のサンタマリアまでとなってしまい夜行区間は廃止、接続列車もないそうだ。

列車には景色が見える時間帯に乗れるからかまわないし、その先もバスならあるだろう。

 

 

まるまる一日、時間があるのでウルグアイアナの街を歩き回る。観光名所があるわけでもないこの街での一日は時間を持て余すかと思われたが、結論を先に言えば、案外そうでもなかった。

 

 

 

この街は、全体が直交街路パターンで構成されていて、中心に広場(というよりも公園だが)がある中南米に典型的な街である。国境の橋に向かう通りには雑貨の露店が並び、広場の反対側には服飾マーケットもある。

公共市場と書かれた建物もあるにはある。ただし、規模は小さく八百屋と肉屋が2軒づつ、あとはチーズ店と閉まっている食堂、これで全部である。地元民は生鮮食料品などスーパーマーケットで仕入れているようだ。スーパーマーケットではココヤシなどもキログラム単位で売っている。

 

 

中心部にはひと区画ながら歩行者モールも整備され、ソルベテリアという喫茶店やランチェリア称する軽食堂があちこちにある。けれども、全体的に見れば人も車も少なく侘し気な街である。川の方へ行ってみると石畳の道が多くなり、馬車がときおり走っていく。

 

 

 

 宿泊は、中心広場に近いドン・エンリケというホテルにした。構えは小さいが、中庭に面して部屋が並ぶしゃれたつくりである。ダンゴムシの化物みたいなタッグがついたキーでドアを開ける。スーパーマーケットでシンカリオルという缶ビールを買ってきたので部屋で飲む。ピルゼンと書いてあっても、地元ブラジル産である。濃くてうまい。

 

 

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