ユーゴスラビア東半分+アルバニアの巻 1996年

11 国際レールバス落穂ひろい

 

 ビィェリィナの中心部に2階建ての図書館がある。本は古びたものばかりで、同じ本が10冊くらいは並んでいる。廊下には建物ができたときの写真が飾ってあり、人々の服装からすると半世紀以上は前に建てられたようだ。当時はさぞかしモダンなものだったろう。隣に写っているアパートは今もそのままにある。

 

 

 

 

 この街にももちろん市場がある。黄葉した木立の下のすがすがしい市場である。しかし、あまり活気はない。お客の風貌も西欧的で、これまで見てきたいくつかの街の市場とはずいぶんと雰囲気が違う。

 

 

 

 

 キャベツを積んだ荷馬車やトラックが走って行くのをよく見かける。後をついていくと、街外れの空地にも市が立っている。道の途中では豚の丸焼きを作っていたり、適当な容器に入れた自家製のワインを売っていたりしてこちらの方がおもしろい。

 

 

 

 

 帰り道、道の傍らの草に埋もれたムスリムの墓石を見つけた。この街でも数年前にはムスリムが殺害・追放される事件があったのだ。

 

 

 

 

 さて、この街に来るときには国境で列車から降ろされてしまったから、ボスニアの鉄道にまだ乗っていない。駅は街の北外れにある。構内は広いけれども線路は1本だけしか残されていないからホームも駅舎前の1面しかない。折しも夕刻の列車が到着する。結構な数の乗客が降りてくる。

 

 

 

 折り返しの列車に乗りこみ、車掌から切符を買う。隣駅までの運賃は2ディナール(46円)。

 

 


 

 ビィェリィナを発車した1両きりのレールバスは暮れなずむ田園地帯を疾走する。次の駅までは数キロメートルとふんでいたが、思ったより遠いかもしれない。やがて、とっぷりと暮れたドゥヴォロヴィ停留所に停まった。

 

 

 バスで通った国道に出ると、ヒッチハイクをしている婦人がいる。ということは、路線バスは期待できないのだろう。そこでビィェリィナに向かって歩き始めると、案外に車相手のレストランなどが点在している。中の1軒で夕食をとり、その後やって来たバスに手を挙げる。このバスは回送の観光バスだったのだが、快く乗せてくれた

上に、運賃はどうしても受け取らなかった。 

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