ユーゴスラビア東半分+アルバニアの巻 1996年

5 チラナからポグラデツへ 

 

 

 

 チラナのプライベートルームにて、明け方、遠くからアザーンの声が聞こえる。露天商が並ぶ団地の中を通って、スカンデル広場に出る。黄葉した木立の下にカフェが出ている。宿で朝食を取ったばかりだけど、テーブルについてしまう。コーヒーは1杯50レク(55円)。

 

 

 

 今日は東部の山中にあるポグラデツへの移動日である。ポグラデツまでは列車もあるにはあるのだが、大層遠回りで本数も少ない上に、鉄道駅はだいぶ街から離れた場所にあるらしい。だからバスを利用することにした。しかし、バスターミナルの位置はわかりにくかった。もっともウロウロしたおかげで市場を見つけて、ブドウを一房もらったりしたから、悪いことばかりではない。

 

 

 バスでまずはエルバサンまで行く。エルバサンにはバスターミナルに隣接して芝生の広がる公園があり、学生たちが闊歩している。フランス語を習っているというのだが、1年生なのか、ほとんど喋れない。そのうちに親分格の若者がやってくる。彼は英語が話せて、それが威厳の源らしい。

 

 

 この公園と道をはさんで城壁と門があり、中は旧市街の趣である。公園でケバブサンドをかじっていると、カメラを手にした男たちが声を掛けてくる。彼らは街頭写真屋で、キャノンのモータードライブ付き一眼レフを手にしている。但し、電池は入っていないし、ポートレートを撮るだけならモータードライブの必要もない。というより、地元民ばかりのこの街で商売が成り立つのだろうか?

 

 

 エルバサンからのバスは峠越えにかかる。秋色に染まった谷間の景色を望んで走る。峠を越えると道はオフリド湖に沿うように走る。湖面はサファイヤ色に輝いている。

 

 

 湖岸にある鉄道のターミナル脇を通過する。周囲は何もない所で、人影もない。列車を利用してこんなところに放り出されていたら、途方に暮れていたことだろう。

 

 

 

 オフリド湖に面したポグラデツは保養地であり、岸に沿っていくつかホテルが並んでいる。しかし観光客の姿はなく、ホテルも営業しているのかどうかはっきりしない。半分、廃墟化したような建物さえ見受けられる。市場に並ぶ店の屋根はトタン板をブロック片でおさえただけで、全般に侘し気な街である。

 

 

 

 それでもホテルの部屋は何とか確保できた。ベランダから外を眺めれば、木立が西日に照らされている。足元では女の子たちが縄跳びをしていたけれども、すぐにやめてしまった。

 

 

 もういちど湖岸をさんぽする。人だかりがしているので近寄ってみると、網を引いていて、小魚が銀色の腹をみせて飛び跳ねるのを、子どもたちが手にしたビニール袋につかみ入れている。そのうちに、漁師の一人が袋に魚を詰め込んで、あたりにいる人に誰彼かまわず手渡し始めた。私ももらった。もらったはいいけれど、どうしようもない。ギリシャレストランに売りに行く。500レク(550円)で売れる。

 

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