バルト三国+ベラルーシの巻 2019年

6 ヴィリニュス

 リガを早朝に出たバスは快適な高速道路を走って、ヴィリニュス市街に差し掛かった。ヴィリニュスは東西に流れるネリス川の南岸に旧市街と新市街がある。新旧といっても相対的なもので、今走っているのはそれらよりもさらに新しい新新市街とでも言うべきところである。取り立てて特徴のない街並みを、丸っこい旧型のトロリーバスが走り回っている。

 やがてバスはネリス川を渡り、新旧の市街を遠望する丘を走って、唐突にバスターミナルに突っ込んだ。15分早着である。

 

 

 

 

 まずは近くにある市場を訪れる。レンガ積のホールが1棟だけというささやかな市場である。それでも、奥の方にいくと食堂があり、ショーケースに料理が並んでいる。冷ボルシチといった感じのスープとパスティで3.5ユーロと手頃な値段のわりに味は良い。

 

 

 少し歩いてアウシュロス・バルタイという門をくぐる。階上が聖母マリアの礼拝堂になっていて、老若のご婦人方が熱心に参詣している。マリア像の左右に銀でできた手や脚がたくさん下げられているのは、病気や怪我の快癒お礼なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 この門が旧市街の入口で、この先、城塞や大聖堂のある広場まで約1.5キロメートルの通りがメインストリートといってよい。わずかに曲がりくねった道を進むと、様々な宗派の境界が左右に次々と現れる。

 

 

  途中で右手にそれて、城塞を見に行く。立派な胸壁が復元されている。展望台590メートルの標識に従って先へ進む。教会の屋根がいくつも望め、その先には丘の上のゲディミナス城、さらに遠くには新新市街の高層ビルが見えている。旧市街の面積が広いせいか、散漫な印象ではある。

 

 ヴィルニア川の谷に降りて行くと、川沿いの道は車の通りが激しい。おいおい分かってくるのだが、この街の旧市街にはタリンやリガと違って車が入り込んでくる。

 ヨーロッパ最大級ともいわれる旧市街だから致し方のない面もあるとはいえ、狭い坂道が抜け道になってしまい、安心して歩けない。

 

 

 

 ヴィリニュスでの宿泊は旧市街の中心に位置する小さなホテルである。ここは地元の旅行会社の経営だから管理がしっかりしていて、紙の領収書も発行してくれる。中庭に面した静かな部屋で、壁には街の通りを描いた油絵が掛けてある。シャワー・トイレ・キッンは共用である。といっても隣室と共用するだけで、時節柄、お客が少ないから専用で使えることになる。

  ところで、フロントの姐さんはロシア語で話している。街でも耳にするのはロシア語が多い。ロシアと国境を接していないリトアニアではロシア語はあまり通じないと聞いていたので意外だ。よく考えてみれば、ロシア本土と国境こそ接していないものの、ロシア語圏のベラルーシは目と鼻の先なわけで、ロシア語が通じるのは当たり前かもしれない。

 

 

 

 

 

 

 まずは広場に建つ大聖堂の鐘楼に登り、街を見下ろしたい。鐘楼の内部は、がっしりした木組みで支えられている。この鐘楼は周囲に適度な空間があり、てっぺんからの眺めは良いのだが、鳥除けの網が目ざわりだ。

 

 

 

 

 鐘楼を後にして、旧市街を旧市街を歩き回ってみる。ショーウインドウには見るべきものがない。そのかわり、袋小路にはハサミの看板をよく見かける。テキスタイルの工房で、ご婦人方がミシンに向かっているのを垣間見る。

 

 

 

 

 お昼ご飯は、ツェペリナイという郷土料理を食する。バターまみれの芋餅と言った感じでかなり脂っこい。ハーフポーション(1つ)にして正解だった。

 

 

 

 

 ヴィリニュスの旧市街には路地というものがあまりない。どの通りも車が通れるくらいの幅はあるのだ。しかし、全くないわけでもなく、オープンストリートマップで見当をつけていた建物の中庭を通り抜ける。大統領府の庭を見下ろし、教会の裏に転がされた謎の巨像(の手)を見て、再びトンネル路地を抜ける。何となく現実世界のものでないような、不思議な路地であった。

 

 

 坂道を下り、再びヴィルニア川の谷に降りる。流れが道路と離れたところは、大統領宮殿から数百メートルしか離れていない場所とは思えないほど鄙びた雰囲気だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 川沿いの遊歩道を歩き、街の裏手にあたる、三つの十字架の丘に登る。旧市街を一望する展望台があり、はるか彼方の高みに鉄道駅の正面が見えている。

 

 

 

 もうひとつの展望台であるゲディミナス城へはケーブルカーが通じている。せっかくだから利用してみるが、斜行エレベーターとの区別がわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 胸壁上のテラスや望楼からは、また少し違った角度で旧市街の眺望を楽しめる。新市街、ネリス川対岸の新新市街も望むことができる。宿にあったウオーキング・ツアーのパンフレットによれば、高層ビルのどこかにも展望スポットがあるらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 すっかり夜景となったが、まだ空には青みが残っている。城を降り、旧市街を縦断してアウシュロス・バルタイまで行く。リガやタリンよりもライトアップされた建物が多く、光の使い方も上手だ。

 

 

 

 聖歌の聞こえたドミニカン教会に入ってみる。おどろおどろしい装飾に満ちた教会である。

 

 

 

 さて、夕飯はどうしようと思う。旧市街には本屋は目立っても、適当な食品店がない。昼間はツェペリナイなどという名物料理を食べたけれども、油っこいので一度食べれば十分である。新市街なら何かあるかもしれないと思って行ってみるけれど、マキシマのスーパーマーケットが一軒見つかっただけである。そこで、パック入りのおかずを買って帰る。牛肉にバルサミコ酢をかけて食べるもので、懐かしい大和煮缶詰の味がした。

 もういちど街に出て、喫茶店に入り夜食に抹茶ケーキを食べる。おいしくはあるけれども、抹茶の香りはあまりしない。

 

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