韓国南部の巻 1996年

3 順天と麗水

 

 

 

 

 順天に戻り、さらに麗水まで行きたいのだが、列車は当分ない。楽安へのバスに乗ったロータリーに戻り、そばにある南部市場をぶらぶらしてから麗水行きのバスに乗車する。

 

 

 

 麗水に着き、まず沿岸旅客船ターミナルに行く。釜山行き水中翼船の切符を買うためなのだが、窓口には仕切りが降ろされ、中では可愛らしい係員が札束を数えている。エンジントラブルで明日も運休すると言う。

 港近くのホテルに投宿する。暑い日なのに、部屋の床にわずかながら暖房が入っている。二重窓には内外共に鍵がない。韓国では内側の木サッシにはなくても、外側のアルミサッシにはクレセントがあるのが普通だが、まあ盗られるようなものも持っていないからかまわない。

 

 

 

 

 

 麗水の市街は山が海に迫った狭い所にあって、山の上の方にまで家が立ち並んでいる。そんな中に鎮南館の大きな瓦屋根が見えている。迎賓館だったというのだが、駅のホームのような柱と屋根だけの建物で吹きっさらしである。いったいどうやって使ったのだろう。

 敷地には石人像が一体あって「擬人戦術の一環として、壬申倭乱の際に李舜臣将軍が作らせた7体のうちの残った1体」とある。しかし、古代ならともかく16世紀も末になって擬人戦術はないだろうし、第一この像はどう見ても文官である。

 

 

 

 港町だから市場のそばには海鮮料理店なぞが並んでいる。食指をそそるが、あいにくとお腹の調子が悪い。そこで繁華街に戻り、レストランで「ハイライス」なる物を食する。野菜炒めあんかけライスといった感じの料理だが、元は日本のハヤシライスなのだそうだ。「ハヤシ」の語源は「ハッシュド・ビーフ」のはずで、「ハッシュド」が「ハイ」になってしまうとは、イギリス人もびっくりである。

 

 

 水中翼船が運休なのでバスで釜山まで行くことにする。バスには7,000ウォンの高速と12,000ウォンの優等との2種類があり、1対2の割合で優等が多い。わずか1,200円なので優等に乗る。横3列、フットレスト付きのゆったりした座席でエア式のイヤホンに、公衆電話まで備え付けられている。お客は数人しか乗っていない。途中、1か所の休憩がある以外は高速道路を淡々と走っていく。車内には音楽がずっとかかっていて「Donde Voy」という曲が流れる。この曲、スペイン語なのだが、なぜか韓国では人気がある。

 4か所の料金所を抜け、大渋滞にも嵌ったけれども、それでも3時間30分で釜山に到着した。水中翼船よりも10分早い。最近、船が減便されたのはこれが原因かもしれない。高速バスターミナルは東莱と西面の中間あたりにある。(後に移転)市内バスに乗り換えて、東莱温泉に行く。

 

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