東ヨーロッパの巻 1993年
1 ウイーンとハンガリー西部の街々
ユーレイルパスを使って西ヨーロッパを周遊したのはもう8年も前のことになってしまった。しかるに未だ東ヨーロッパには足を踏み入れていない。そこで、これも未踏のオーストリアを起終点に、バルカン半島を除く東欧を一周してみようと思う。
ウイーンには東京からオーストリア航空が就航している。滅多に乗れない西欧の航空会社である。だから期待したのだが、結果は悲惨であった。何しろひもじいのである。運賃は比較的安いのに、人件費は高いだろうから機内食の予算を削っているのだろうか?
モスクワを経由して、夕方にウイーンのシュベヒャート空港に着く。鉄道が乗り入れているので便利である。しかし、地下にある鉄道駅は薄暗く殺風景で、電車は旧式、雑然とした風景の中を走る。この電車、旧市街に近いミッテ駅に停まる。降りてみれば、浮浪者風の人間がうろうろしている。駅自体もどうということもない中間駅なので足早に立ち去る。
ウイーンに着いても満腹にはならない。屋台のソーセージが1本31シリング(375円)、缶ジュースが19シリング(230円)。わかっていたことではあるが、高い。どうも第一印象はよろしくないウイーンではある。
ウイーン シュウェーデン・プラッツ
翌朝、鉄道ターミナルのひとつ、南駅へ行く。南西方向へのホームと南東方向へのホームが直角に接している変わった構造である。この駅舎もウイーンらしさが何も感じられないつまらない駅だ。
ハンガリーのショプロンまでの切符を買う。所要時間は1時間あまりでも国際線だから「Ausland」の窓口へ行く。120シリング(1,440円)。空港のような出発案内板を見ながら動く歩道で2階に上がる。夏休みだからかキャンプに行く子どもたちと見送りの母親たちが大勢集まっている。
ウイーン 南駅
エベンフルスという駅で後ろに電気機関車を連結する。ショックは全くない。方向が逆になり、カーブが多くなる。どこで国境を越えたか全くわからないままにショプロンに到着する。コンパクトな旧市街にパンやら鉱業やら様々な博物館がある楽しいところである。
ショプロン
ショプロンからソンバトヘイまではトウモロコシ畑の中をゆっくり走る。ソンバトヘイではクーセグ行きの支線に乗り換える。レールバスを5両も連ねた編成で、車両ごとに運転台がついているのは無駄な感じがする。
ソンバトヘイ
走り出すと2~3分おきに小駅に停まる。ドアが閉まるときにはネコの尻尾を踏んだような音がする。
クーセグは鄙びた城下町で、日曜の夕方という時間帯のせいもあってか、あまり店も開いていない。町中にも無人の果物スタンドがあって、ルビー色の山ブドウがカップ1杯10フォリント(24円)、洋ナシが1キロ30フォリント(72円)。
クーセグ
翌朝、ソンバトヘイに戻る。ローマ時代の遺跡があるので見に行く。イシス神殿だというのだが、コンクリートで無理に復元したような感じがする。
ソンバトヘイ
ソンバトヘイからは幹線の急行列車でブダペストへ向かうつもりでいたが、予定していた列車はこの1週間ほど運休になっているようだ。東へ向かう別な列車に乗り込む。こちらは鈍行で通る路線も違う。
ひまわり畑の中の信号場で対向列車と交換する。ボバという駅で、向かいに座っていた老夫婦が降りる。サクランボを残していってくれる。「ケーセネム・セーペン(ありがとう)」と言ったら、腕を握った。
ヘレンド
ヴェスプレム
ヘレンドで代行バスに乗る。有名な焼き物の故地ではあるが、駅は小さい。バスはひと駅区間だけで、ヴェスプレムから再び列車に乗り、セーケシェフェヘールバールという街に着く。レリーフを壁に埋め込んだ駅舎はどことなくローマ風である。意外と賑やかな旧市街があって歩き回るにちょうどいい。
セーケシェフェヘールバール
夜、ブダペストのディリ(南)駅に到着。ケレティ(東)駅に隣接するパークホテルに投宿する。
ブダペスト ディリ(南)駅