建材メーカーに勤務していたとき、地域の工務店に新しい工法を拡販する事業に携わっていて技術営業として現場指導をしていた。
立場上は「施工指導」だが、客先は教えてくれて当たり前というスタンスのところがほとんどだったから、自分が動かなければならないことが多くけっこうな肉体労働だった。
それにまだ若かったから、現場の大工が言うことを聞いてくれないこともあった。
だから、バカにされまいと工具の使い方を覚え釘を打ったり、上棟の際に棟まで上って屋根の施工を教えたりした。
会社としてはあくまで安全な場所から職人に施工方法を教えるだけにせいと言うが、現場では施工している箇所まで上って教えないと分かるはずもない。
落下防止の防護ネットも張ってない梁や母屋の上を職人のごとく歩き廻ったり、資格もないのにクレーンの玉掛けまでしていたものだ。
ただ、棟木まで組上がって完成してからてっぺんに立つとなんとも爽快だった(笑)
また地域によっては上棟式があり、集まってきた近所の住人に向けて棟梁がてっぺんから餅や5円玉を投げたりするからお祭り気分で楽しかった。
とある現場で、とても気難しい棟梁がいて僕が施工方法を教えると、腕組みしながら
「じゃあ、お前が釘を打ってみせろ」
と言われ、長さ10cm近い釘を何本も何本も何本も打った。
バカにされまいとこれでもかとしびれるまで打ち続けた。
棟梁はそれをずっとだまって見ていたが僕の打ち方があまりにぎこちなかったのか、ついに見かねて、「貸してみろ!」と言って自分で打ち始めた。
そして、休憩時間のときその強面の棟梁が、「ほら、親方!コーヒーでも飲めや」と言って缶コーヒーをくれた。
受け入れられたのかとなんか嬉しい気持ちになった。
それからその現場に行くたびに、大工たちは僕を「親方~!」と呼んでくれた(笑)
とにかく、高いところが平気でないとできない仕事だったな。
特に夕方現場が終わるときてっぺんまで上ってひと通り現場チェックしながら眺める夕日がけっこうきれいだったりした。