2024/6/21 光と虹と神話⑤ | 福山機長の夜間飛行記録

福山機長の夜間飛行記録

月曜日から金曜日までの毎晩放送されるラジオ番組"JET STREAM"のうち、福山雅治機長のフライト部分を文字に書き起こして写真を貼り付けただけの自己満足ブログです。(※特定の個人・団体とは一切関係ございません。)

JET STREAM・・・作家が描く世界への旅。


今週は、自然写真家・高砂淳二によるフォトエッセイ『光と虹と神話』より、一部編集してお送りしています。


今夜は、その最終夜。


地球の極北、アラスカの自然の中へ、あなたをお連れします。


番組WEBサイトの、高砂淳二の写真と共に、お楽しみください。


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アラスカでは、海、川、氷、滝、雨、雪、霧、もやなど、水が何種類もの姿となって、一枚の写真に写り込む。


水が自然の中をグルグル回って、沢山の生き物を育んでいるのが、分かる。


特に、生命が活気づくのは夏で、海や川は鮭で溢れ、多い場所では鮭が水面を、覆い尽くしてしまうほど。


みんな、川を遡上して、産卵しようとしているのだ。



[鮭]


ハイイログマとか、アメリカヒグマなどと呼ばれるグリズリーたちは、その鮭が遡上してくる場所に待ち構えていて、ご馳走に預かっていた。


無数の鮭たちが、何とかして滝を越えようとひしめき合っているところを、足で不器用に踏んづけたり、口を水に突っ込んで、そのままくわえたりしながら、食べている。


周りには色んな鳥たちもいて、その贅沢なおこぼれをついばんでいた。


鮭は、産卵した後死んでしまうのだが、この鮭たちが、まるで川という道を通って、海から大量のタンパク源を、自ら運んでいるようにも見えたし、水が命を海から山に運んで、栄養分の循環を作っているようにも、見える。


アラスカには、ご存知のように多様な先住民が、暮らしている。


エスキモーと呼ばれる人たちだ。


グリーンランドからカナダ、アラスカ、ロシアのチュクチ半島にかけての、極北地域に暮らす人々の総称で、元々は「かんじきを編む者」という意味を持つ。



[エスキモー]


後にカナダでは、エスキモーが「生肉を食べる野蛮人」という意味合いで使われるようになり、「人々」という意味の、イヌイットという呼び方に変わった。


クジラやアザラシなどを獲って暮らす、海岸沿いの人々。


カリブーと呼ばれる、トナカイや鮭などを獲って暮らす、内陸の人々など、様々で刺身文化や自然観など、とても親しみが持てる、僕らと同じモンゴロイド仲間だ。


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アラスカに住む多様な先住民たちは、季節ごとに巡ってくる動物の命をありがたくいただき、無駄無く使い切り、糧となってくれた事への感謝を込めて、また来年も戻ってくるように、祈りと供養を捧げる。


宇宙を巡る地球の上で、季節が巡り、動物が巡り、鮭が海と山を巡る。


僕ら動物は、その循環の中で巡ってくるものをいただき、やはり一生という短い循環を生き、子孫を残す。


以前アラスカで、クジラが氷に閉じ込められた時、世界中からマスコミが集まり、色んな保護団体がクジラを救出しようとする様子を、逐一報道した事があった。


後である本で知ったが、あの救出劇の時、地元のイヌイットたちは、


「昔は、こんな事が起こったら、神様からのプレゼントだと言って、ありがたくいただいたものさ」


と語っていたのを知り、僕のDNAが妙に納得したのを、覚えている。


川に集まる鮭も、グリズリーたちへの、神様からの贈り物なのだ。


【画像出典】


https://jpa.animalia-life.club/%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%81%AE%E3%82%A4%E3%83%8C%E3%82%A4%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%AE%E6%9D%91