JET STREAM・・・作家が描く世界への旅。
今週は、俳優・ユニセフ親善大使の、黒柳徹子のエッセイ集『小さいころに置いてきたもの』の中から、「ヤンキー・スタジアム」の章を、番組用に編集してお届けしています。
今夜は、その第2夜。
人生で初めて、現場で野球を観戦する。
その日の試合は、ニューヨーク・ヤンキース対シアトル・マリナーズ。
スタジアムに着くと、そこは何もかもが新鮮な光景だった。
まずは、ホットドッグに挑戦。
そして、目の前では大好きなイチロー選手が、練習している。
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5万人の人が詰めかけるので、初めは車が混むだろうから地下鉄にしよう、と話し合ったけど、後からカールさんから連絡があって、地下鉄は物凄く混むけど、車だとニューヨークの街の中から、30分くらいで混んでないと言うので、車にした。
5月の23日。
その日は朝から晴天で、でも暑くもなく、絶好の野球日和だった。
車社会のアメリカと思っていたのに、なんか道は全く混んでいなくて、あっという間に着いてしまった。
みんな地下鉄で行くのだろうけど、それにしてもスイスイと行かれたのには、驚いた。
そして、5万人の人が詰めかけてるのに、30分くらい前に中に入ったら、なんかグッズのお店も混んでなくて、ロビーも人がいなくて、観客はどのくらい前に来ていたんだろうか?と、不思議なくらいだった。
グッズのお店で、
「マリナーズの、イチローさんの、何か無いですか?」
と聞いたら、
「マツイのしか無いよ」
と言われた。
考えたら、ヤンキースタジアムで、他のチームの物を売っているとも、思えない。
[ヤンキースタジアム]
ホットドッグは食べなきゃダメ、とみんなに言われていたので、食べる事にした。
でも、中のソーセージとパンとが、同じ長さのはダメ。
ソーセージが、両端からはみ出しているのが美味しい、と注意を受けていた。
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お席はすごくいい席で、私の右前方が、選手の顔が見えるくらいの距離で、ヤンキースのベンチ。
選手が子供たちにサインしてるのも、見えている。
斜め左の下に、マリナーズのベンチという位置だったけど、なんと背番号51のイチローさんがバットを振って、お稽古している姿が見えるという、いい場所。
昔の私なら、背番号と打順が同じだと思っていたから、
「イチローさんは51番目に打つんだ。
随分待つな」
と心配したけど、ごく最近、背番号は打つのに関係ないと分かったので、50人も待たなくていい、と私は安心していた。
ともあれ、バッターボックスに立った選手の姿がほぼ正面に見える、まあ野球の分からない私には、申し訳ないお席だった。
お客さんは、ビールを買ってきて飲んでる。
どうやら、野球はホットドッグとビールらしい。
水色のお座布団みたいなものを頭に乗せている売り屋さんがいたので、何だろう?と思ったら、綿菓子だった。
私が待っていたのに来なかったのは、アイスクリームで、どうも売りには来ないらしい。
5万人のお席はびっしりで、夏時間でまだ青い空が輝いてる中で、試合は始まった。
夜、7時半だった。
ちなみに、ナイターというのは英語じゃないらしく、私がカールさんに
「ナイターよ」
と言ったけど、通じなくて、
「ナイトゲームの事?」
と聞かれたので、どうやらこれは日本で作った言葉らしかった。
【画像出典】