2024/3/5 オーストリア滞在記② | 福山機長の夜間飛行記録

福山機長の夜間飛行記録

月曜日から金曜日までの毎晩放送されるラジオ番組"JET STREAM"のうち、福山雅治機長のフライト部分を文字に書き起こして写真を貼り付けただけの自己満足ブログです。(※特定の個人・団体とは一切関係ございません。)

『JET STREAM』


作家が描く世界への旅。


今週は、女優、中谷美紀のエッセイ『オーストリア滞在記』を、一部編集してお送りしています。


今夜は、その第2夜。


「5月1日 人生初のロックダウン」後半。


オーストリア・ザルツブルクの山荘で暮らす中谷と、ドイツ人の夫ティル。


二人は、自分たちらしい庭について、構想を練っている。


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オーストリアに来た最初の年には、まだ客人気分で、庭に自らの好みを反映する気にはなれなかったし、そもそも日本の山野草や苔庭が好きだったため、西洋の庭をどうしたら良いのかも分からなかった。


夫と私で意見が一致しているのは、自動芝刈り機で定期的に3センチに刈り揃えられた芝生や、映画『シザーハンズ』のトピアリーのように、人工的に刈り込まれた針葉樹、チューリップやパンジー、バラのアーチなど、ガーデニングのお手本のような庭は、好みではない事だった。


この数年間で少しずつ、ヨーロッパの庭巡りをしてみたり、今まで見てきた庭の記憶を辿ると、パリのアンドレ・シトロエン公園や、ケ・ブランリー美術館の庭を手掛けた、ジル・クレマン。


北海道の十勝千年の森を手掛けた、ダン・ピアソン。


そして、ニューヨークのハイラインの植栽や、イギリスのハウザー&ワースサマーセットの庭を手掛けた、ピエト・オウドルフが、私たちの琴線に触れる、繊細で自然の営みに配慮した、メドウ・ガーデンを提唱していた。


ジル・クレマンとピエト・オウドルフの庭は、既にいくつか訪れ、彩り豊かな花の季節だけでなく、秋風にそよぐグラス類が美しく、冬枯れの姿さえも、芸術的に美しく見えるよう計算し尽くされ、それでいて、自然のなせる技によって変化する事も受け入れる、懐の深い庭造りに感激した。


残念ながら、十勝の森はまだ訪れる事が叶わずのままだけれど、いつか訪れてみたいと思っている。


[十勝千年の森]


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ウィーンフィルのホルン奏者、セバスチャン・マイヤー氏は、オーケストラの中でも屈指の植物フリークで、世界中の植物の種子を集めては、自ら所有する原野に植え付け、今やジャングルと化したその場所を愛でているという。


宿根草の専門店やザルツブルクのマイヤーという、園芸専門店を紹介してくれたのも、彼だった。


既に、庭の一部では2年ほど前から、ススキやパンパスグラスを植えてみたり、裏山のシダを少々頂いてきて移植したり、セバスチャンおすすめの店で買った、宿根草セットを植え込んだりしている。


この土壌との相性や湿度の具合、耐寒性の実験をしていた。


オーケストラでは、プレイヤーとしての仕事に加えて、ツアーマネージャーとしての仕事や、毎年シェーンブルン宮殿の庭で開催され、およそ13万人が訪れる、サマーナイトコンサートのプロジェクトマネージャーとしての役割も担い、常に無駄無く効率よく仕事をこなす、ドイツ人気質な夫と、面倒な仕事を後回しにしがちな怠惰な私とでは、庭仕事に対する姿勢も異なり、さらにはそれぞれが独自の美意識を持っているため、しばしば言い争いにもなるのだけれど、この数年間で感覚的に学んだ庭のあり方を基に、ガーデンデザイナーの真似事を私が、庭師の真似事を夫が担当し、二人の素人が必死で一大プロジェクトを進行中なのだった。


その一方で、コロナ禍の影響により、ドイツ語のオンラインクラスも受講している。


本日は洋服について、さらには交通標識についての描写を、復習した。


ティータイムには、蕎麦粉とパフキヌア、麻の実、ひまわりの種を混ぜた、チョコチップクッキーを。


今日は、結構美味しく焼けたと思う。


【画像出典】