2024/2/14 この道をどこまでも行くんだ③ | 福山機長の夜間飛行記録

福山機長の夜間飛行記録

月曜日から金曜日までの毎晩放送されるラジオ番組"JET STREAM"のうち、福山雅治機長のフライト部分を文字に書き起こして写真を貼り付けただけの自己満足ブログです。(※特定の個人・団体とは一切関係ございません。)

『JET STREAM』


作家が描く世界への旅。


今週は、作家、椎名誠のエッセイ『この道をどこまでも行くんだ』を、お送りしています。


今夜は、その第3夜。



「遊民」の章から、「マサイ族の暇つぶし」。


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アフリカのマサイ族は、みんな槍を持っている。


子供でも持っている。


彼らの仕事は遊牧が多いが、いわゆる防護(柵とか電撃装置のある囲い)の全く無い所に、家畜を放っているので、いつ野獣に襲われるか分からない。


そのためにも、槍は必要だ。


[マサイ族]


実際には、家畜を襲う野獣は群れの背後からとか、夜間などに忍び寄ってくるので、実戦には、もう槍はそれほど役に立たなくなっているが、そうであっても持っていないと不安、という事もあるのだろう。


マサイ族は長身が多いし、そういう状況だから、目が殺気立っている。


サバンナの細い通路をマサイ族とすれ違うと、その殺気で、こちらの精神が震える。


写真を撮られるのが特に嫌いで、神経質なところがある。


槍を向けられるので、普通の感覚では、まず写真など撮れない。


それでもマサイは、結構イタズラ好きなところがある。


近くに象の群れがいた時だ。


ちなみに象を怒らせると、これは別の意味で、マサイ族よりも恐ろしい。


何かの不都合があって象に追われたら、もう助からない、と言われている。


なぜなら、象の走るスピードは、その巨体に似合わず速いからだ。


[象]


木か何かに登れたとしても、本当に怒った象は、その木に体当たりしてくる。


だから、象は絶対に怒らせない事だ、と比較的おとなしいキクユ族に教えてもらった。


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マサイ族と、象の群れが鉢合わせした時だ。


象もマサイも、いたずらに喧嘩する事は無いから、出会い頭になっても、お互いに知らんぷりをしている事が多い。


相互に刺激し合わなければ、平和なのだ。


ところが、僕が写真を撮った時、子供も連れているマサイ族の5人は、暇だった。


暇と言えば、家畜の放牧に行くマサイ族は、年がら年中暇なのであるが。


で、近くにいる象の群れに、彼らは石を投げては、知らんぷりを決め込んでいる。


象は、どこから石が飛んできたか、よく分からない。


象と象同士、色々話し合っているみたいだった。


結局、誰が投げたかは判明しない。


で、少し経つと、石が飛んできたのを忘れてしまう。


マサイ族は、それを盗み見て、仲間内でクスクス笑うのだ。


しばらくすると、また別のマサイが、象に石を投げる。


同じ事が繰り返される。


みんなで一斉に石を投げたら、利口な象には、その5人組が攻撃者だという事が分かるから、その後は戦いになる。


さっきも書いたように、象が走って攻めてきたら、マサイといえども勝ち目は無い。


キクユ族に聞いたら、そんな時は、マサイの5人組はそれぞれ別方向に向かって、逃げるらしい。


象は、5組に分かれて攻撃するというほどまでは、敵対感覚は無いから。


この勝負、イタズラマサイの勝ち、という事になるのだ。


【画像出典】