『JET STREAM』
作家が描く世界への旅。
今週は、怪魚ハンター・小塚拓矢によるエッセイ『怪魚を釣る』より、一部編集してお送りしています。
今夜はその第4夜。
大学時代から、巨大淡水魚を追いかけ、世界を巡る小塚拓矢。
その釣りのスタイルは、時代と共に変化を遂げている。
今夜は、そんな中でも変わらない、怪魚釣りを成功させる秘訣にまつわる話。
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近年では、インターネットが急速に発達し、SNSを使って手軽に情報を得られるようになった。
しかし、だからこそ僕は、僻地を旅する際に、インターネットから距離を置く事にした。
未知を求めるというスタンスの旅では、時にインターネットが、おせっかいな存在となる。
ネットに上がっている情報とは、結局のところ、誰かの後追いでしかない。
それならば、自分の足で情報を探した方が、面白いのだ。
一方で、社会人になってから始めた先進地域の旅では、インターネットを上手く活用し、時間とお金の配分なども徹底的に検討する。
Google Earthの航空写真で確認したポイントへ、レンタカーで乗りつけるというケースも多いが、良くも悪くもコストパフォーマンス重視の方法だ。
北米やヨーロッパ、オーストラリアなどの先進国では、そもそも釣りのライセンスを購入しなければならない。
また、釣具店には詳細なポイントマップがあり、一日に釣り上げていい匹数が、事細かに決められている。
先進地域を旅する際のスタンスは、未知を求めるという辺境でのそれと、大きく異なる。
コスパさえ良ければ迷わず現地ガイドを雇い、何不自由ない旅行を楽しむ事もある。
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人との関わりは、怪魚釣りの成功を大きく左右する。
「こいつに釣らせてやりたい!」
と思ってもらえなければ、目当ての魚を釣るのは難しい。
そこで、海外に行く時は、カバンに小さなおもちゃを詰めていき、村の子供たちと積極的に遊ぶようにしている。
子供と仲良くなれば、その子たちの親とも親しくなれる。
そして、彼らと同じ釜の飯を食う。
幸い、これまでの旅で、取り返しのつかないような事態に陥ったりした事は、一度も無い。
ただし、流れに身を委ねているうちに上手くいく事もあれば、付き合う人を何度変えても、ここだ!という場所に辿り着けない事もある。
人との付き合いやすさは、国によってかなり異なる。
例えば、アマゾンの奥地は危険だと言う人もいるが、個人的にはみんなが豊かに生きていて、優しい人が多いという印象が強い。
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また、島国であり、小さな民族単位の村社会で成り立っているパプアニューギニアには、人を気遣う気質があった。
そのため、皆まで言わずとも、こちらが求めている事を汲み取って動いてくれる人が多く、とても居心地がいい。
一方で、僕が訪れたアフリカは、そんなに生優しくなかった。
外国人と見るや、お金に対してあけすけで、おまけに強く自己主張をしてくるので、言い争わなければならない事が多い。
毎日喧嘩ばかりだった。
もっとも、本音をぶつけ合う日々のおかげでと言うべきか、東アフリカのイギリス植民地文化圏に、およそ2ヶ月滞在した間に、それまでほとんど話せなかった英語が、随分と上達した。
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