2024/1/23 怪魚を釣る② | 福山機長の夜間飛行記録

福山機長の夜間飛行記録

月曜日から金曜日までの毎晩放送されるラジオ番組"JET STREAM"のうち、福山雅治機長のフライト部分を文字に書き起こして写真を貼り付けただけの自己満足ブログです。(※特定の個人・団体とは一切関係ございません。)

『JET STREAM』


作家が描く世界への旅。


今週は、怪魚ハンター・小塚拓矢によるエッセイ『怪魚を釣る』より、一部編集してお送りしています。


今夜はその第2夜。


世界56ヶ国を旅し、怪魚と呼ばれる巨大淡水魚を釣ってきた、小塚拓矢。


今夜は、そんな彼なりの怪魚の定義を考えるきっかけとなった、巨大魚ハンターとの出会いについて、紹介する。


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目標を数値化するようになったのは、ヤコブ・ワーグナーというチェコ人に出会ってからだ。


彼は世界的な巨大魚ハンターで、出会った当時、雑誌『ナショナルジオグラフィック』で、巨大魚保護プロジェクトという企画を進めていた。


ヤコブは、100キログラムに成長する巨大淡水魚を、フレッシュウォーター・ジャイアンツと称し、地球上に生息するその全てを釣り上げる事を、ライフワークとしていた。


これはあくまで僕の個人的な印象だが、体長1メートル、もしくは体重10キログラムを怪魚とするなら、ヤコブの言うフレッシュウォーター・ジャイアンツは、"怪物"とでも呼びたくなる。


というのも、100キログラムの魚とは、長さで言えばおよそ2メートルにもなる、超巨大魚だからだ。


生物の体は、ほとんどが水で出来ているので、大きな魚も小さな魚も、長さが2倍であれば、重量は2の3乗倍で8倍。


理論上は、80キログラムとなる。


ただし、生物の多くは巨大化するにつれて、長さ以上に太り出す。


生息環境のキャパシティや、骨よりも肉の方が成長しやすいという生理的な理由など、様々な要因が重なり、概して餌環境が良ければ、ある程度まで大きくなった個体は、長さよりも太さで巨大化する傾向にある。


だから、2メートルでおよそ100キログラムという数値は、彼の言葉で言うフレッシュウォーター・ジャイアンツ、僕の言葉で言う怪物の目安として、妥当だと思う。


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ヤコブと最初に出会ったのは、2009年の夏。


アフリカのコンゴ川で、幻の巨大魚ムベンガを追っていた時の事だ。


彼もまた、3ヶ月という期間をかけて、ムベンガに挑戦中だったが、あいにく船が故障し、修理のために停滞を余儀なくされているという事だった。


ヤコブは、魚を一般的な名称だけでなく、学名でも呼んだ。


そんな釣り師は、初めてだった。


生物の名称には学名の他、日本語では和名、英語では英名がある。


しかし、かつては生物の形態を基準にして名称を決めていた事もあり、例えばナギナタナマズという和名の魚は、実はナマズとは関係なかったりする。


[ナギナタナマズ]


そのため、魚を最も客観的に呼ぼうとすれば、世界共通の名称であり、属名と種小名で構成された、ラテン語の学名で呼ぶ事になる訳だ。


ヤコブが魚を学名で呼ぶのには、彼の親族が生物学者をしている事も、関係しているのかもしれない。


彼は他の釣り人に比べると、魚を客観視しているように感じられた。


フレッシュウォーター・ジャイアンツという呼び名といい、100キログラムという明確な定義付けといい、ヤコブは巨大魚を、自分なりの魚のカテゴリーとして捉えようとしているのかも、しれない。


【画像出典】