2022/5/27 マウイ島⑤ | 福山機長の夜間飛行記録

福山機長の夜間飛行記録

月曜日から金曜日までの毎晩放送されるラジオ番組"JET STREAM"のうち、福山雅治機長のフライト部分を文字に書き起こして写真を貼り付けただけの自己満足ブログです。(※特定の個人・団体とは一切関係ございません。)

「新しい空の旅へ」


今週は、『JET STREAM in HAWAII』。


様々な人や場所、伝統に息づく物語を、お送りします。


今夜は、マウイ島への旅。


マウイ島の東へ向かう360号線は、"ハナ・ハイウェイ"と呼ばれている。


この道をずっと行けば、"天国のような村"と称される、ハナがある。


「Heavenly Hana(天国のようなハナ)」


有名なキャッチコピーとなったその言葉を、最初に言ったのは誰だったのか?


それは分からないが、ハナへ行って滞在すれば、きっとあなたもこう思うだろう。


ハナ。


確かにここは、天国のようだ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


マウイ島のカフルイ空港から、島の東の端っこの方にあるハナという村まで、ハナ・ハイウェイと呼ばれる360号線を車で走っていく。


走行距離は、およそ83キロメートル。


大した距離ではない。


それなのに、優に2時間半、時には3時間から4時間もかかってしまう。


ハイウェイとは名ばかりで、その道の半分は、海へ迫り出す岸壁に沿って造られた、曲がりくねった道(ワインディング・ロード)なのだ。


[ハナ・ハイウェイ]


急カーブが連続する。


崖ギリギリに造られている道のほとんどに、ガードレールが付いていない。


先の見通せないカーブなのに、ミラーがない。


しかも、道はずっと細く、時に1車線の幅しかない。


そんな道で対向車が来ると、どちらかが恐る恐るバックしなければならない。


互いの車の側面を擦り付け合ってなんとか行き交う、という事も稀にある。


そのようにあまりにスリリングな山道だから、慣れていない旅行者だとどうしてもノロノロ運転になる。


そんな訳で、ハナまではたっぷり時間がかかる、という訳だ。


だが、そのような大変な思いをしても、そこへ行けばきっと分かるだろう。


その小さな村ハナは、天国か桃源郷のようなのだ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


"天国のような村"と称される、ハナの村。


その村から、車で少し東へ走った場所に、青い海を臨む小さな教会がある。


人が来る事は滅多にないが、時々彼に会いたくて、訪れる旅人はいる。


"彼"とは、チャールズ・リンドバーグ。


偉大なアビエイター(パイロット)である。


[チャールズ・リンドバーグ]


1902年、アメリカ合衆国・ミシガン州で生まれたチャールズ・リンドバーグは、1927年、スピリット・オブ・セントルイスと名付けたプロペラ機を独りで操縦し、アメリカ・ニューヨークから大西洋を越え、フランス・パリへ飛んだ。


人類初となる、大西洋単独無着陸飛行の成功だった。


1931年には、北太平洋単独横断飛行にも成功。


彼の偉業を欧米の新聞が大きく取り上げ、彼はいくつもの雑誌の表紙を飾り、本が何冊も書かれ、映画にもなり、チャールズ・リンドバーグは20世紀の伝説の一人となった。


世界中を旅したチャールズ・リンドバーグが、マウイ島のハナを愛していた事は、あまり知られていない。


若い頃この場所を訪れたリンドバーグは、いつかここに暮らしたい、と考えていたという。


1974年、病に倒れ余命わずかのリンドバーグは、医師の強い反対を押し切って、家族と共にマウイ島へ飛び、人生最後の日々を、ハナで愛する人々に囲まれて過ごした。


彼は、家族にこう伝えたという。


「僕は、愛するマウイのハナで、目を閉じたい。


僕の魂がこの世を去ったら、この肉体を、ユーカリの木で作った何の飾りもない棺桶に入れてくれ」


チャールズ・リンドバーグの墓石には、こう記されている。


[リンドバーグの墓]


「明日の朝、僕は飛び立つ。


遥か、遠くの海へ」


【画像出典】