「新しい空の旅へ」
今週は、『JET STREAM in HAWAII』。
様々な人や場所、伝統に息づく物語を、お送りします。
今夜は、マウイ島への旅。
マウイ島の東へ向かう360号線は、"ハナ・ハイウェイ"と呼ばれている。
この道をずっと行けば、"天国のような村"と称される、ハナがある。
「Heavenly Hana(天国のようなハナ)」
有名なキャッチコピーとなったその言葉を、最初に言ったのは誰だったのか?
それは分からないが、ハナへ行って滞在すれば、きっとあなたもこう思うだろう。
ハナ。
確かにここは、天国のようだ。
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マウイ島のカフルイ空港から、島の東の端っこの方にあるハナという村まで、ハナ・ハイウェイと呼ばれる360号線を車で走っていく。
走行距離は、およそ83キロメートル。
大した距離ではない。
それなのに、優に2時間半、時には3時間から4時間もかかってしまう。
ハイウェイとは名ばかりで、その道の半分は、海へ迫り出す岸壁に沿って造られた、曲がりくねった道(ワインディング・ロード)なのだ。
[ハナ・ハイウェイ]
急カーブが連続する。
崖ギリギリに造られている道のほとんどに、ガードレールが付いていない。
先の見通せないカーブなのに、ミラーがない。
しかも、道はずっと細く、時に1車線の幅しかない。
そんな道で対向車が来ると、どちらかが恐る恐るバックしなければならない。
互いの車の側面を擦り付け合ってなんとか行き交う、という事も稀にある。
そのようにあまりにスリリングな山道だから、慣れていない旅行者だとどうしてもノロノロ運転になる。
そんな訳で、ハナまではたっぷり時間がかかる、という訳だ。
だが、そのような大変な思いをしても、そこへ行けばきっと分かるだろう。
その小さな村ハナは、天国か桃源郷のようなのだ。
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"天国のような村"と称される、ハナの村。
その村から、車で少し東へ走った場所に、青い海を臨む小さな教会がある。
人が来る事は滅多にないが、時々彼に会いたくて、訪れる旅人はいる。
"彼"とは、チャールズ・リンドバーグ。
偉大なアビエイター(パイロット)である。
[チャールズ・リンドバーグ]
1902年、アメリカ合衆国・ミシガン州で生まれたチャールズ・リンドバーグは、1927年、スピリット・オブ・セントルイスと名付けたプロペラ機を独りで操縦し、アメリカ・ニューヨークから大西洋を越え、フランス・パリへ飛んだ。
人類初となる、大西洋単独無着陸飛行の成功だった。
1931年には、北太平洋単独横断飛行にも成功。
彼の偉業を欧米の新聞が大きく取り上げ、彼はいくつもの雑誌の表紙を飾り、本が何冊も書かれ、映画にもなり、チャールズ・リンドバーグは20世紀の伝説の一人となった。
世界中を旅したチャールズ・リンドバーグが、マウイ島のハナを愛していた事は、あまり知られていない。
若い頃この場所を訪れたリンドバーグは、いつかここに暮らしたい、と考えていたという。
1974年、病に倒れ余命わずかのリンドバーグは、医師の強い反対を押し切って、家族と共にマウイ島へ飛び、人生最後の日々を、ハナで愛する人々に囲まれて過ごした。
彼は、家族にこう伝えたという。
「僕は、愛するマウイのハナで、目を閉じたい。
僕の魂がこの世を去ったら、この肉体を、ユーカリの木で作った何の飾りもない棺桶に入れてくれ」
チャールズ・リンドバーグの墓石には、こう記されている。
[リンドバーグの墓]
「明日の朝、僕は飛び立つ。
遥か、遠くの海へ」
【画像出典】