ベルギー北部にあるヨーロッパを代表する貿易港、アントワープ。
そのアントワープの中心部から、路面電車に30分程乗ると、ホーボーケンという名の小さな町に着く。
ホーボーケンと言えば、アニメファンならすぐに、可愛いネロとパトラッシュの姿が思い浮かぶ事だろう。
ここホーボーケンは、『フランダースの犬』の舞台となった町。
今、この町の一角に、ネロとパトラッシュの銅像が立っている。
[銅像]
この銅像を見ると、ちょっと気になるのが、我々のイメージするパトラッシュとは、その姿があまりにかけ離れている事。
実は、『フランダースの犬』を書いた原作者、イギリスの女流作家ウィーダがここを訪れた時に見たのは、ブービエ・デ・フランドルと呼ばれる犬種。
ブービエとは、フランス語で"牛飼い"。
当時は、牧畜犬や荷車を引く犬として使われた、大型犬である。
[ブービエ・デ・フランドル]
昔ヨーロッパでは、仕事に使う犬は大きな耳や尻尾が邪魔になる事から、子犬の時に耳と尻尾を切り落としたという。
『フランダースの犬』が書かれた当時、ベルギーでは馬はあまりにも高価で、貧しい人には買えるものではなかった。
そんな貧しい人の暮らしを支えるために、この忠実な大型犬ブービエ・デ・フランドルが、荷車を引いていたのだった。
大変な犬好きで、動物愛護協会の設立にも尽力したという原作者のウィーダ。
[ウィーダ]
彼女は旅先のここホーボーケンで、荷車を引く犬の姿を見て、『フランダースの犬』の話を思い付いたのだろう。
今では高値で取引される、このブービエ・デ・フランドル。
もちろん、耳や尻尾は、もう切られる事はない。
【画像出典】