オーストリアとの国境に近い、ドイツアルペン街道の東南端の村、ベルヒテスガーデン。
この村の近くに、美しい湖がある。
ケーニヒス湖だ。
[ケーニヒス湖]
アルプスの氷河から流れ出てきたこの湖の水は、まるで水晶のように透明。
湖面に空と森を映しながら、深くなるほど神秘的な緑色へと変わる。
その美しさは、ドイツ随一と讃えられる。
19世紀まで、風光明媚な保養地として知られた、ここベルヒテスガーデン。
20世紀に入ると、ここは歴史の表舞台に登場する。
この湖を臨む高台に立つ山荘を、アドルフ・ヒトラーが購入。
その山荘を、"ベルクホーフ(山の宮殿)"と名付けてからだ。
以来、この周辺は、ナチスの要人の別荘地。
親衛隊の宿舎や発電所、地下トンネルに幼稚園まで造られたという。
戦後、こうしたナチスの遺産は全て破壊され、現在はその跡地に、オーバーザルツベルク現代史研究所という博物館が残るだけだ。
[オーバーザルツべルク現代史研究所]
ベルヒテスガーデンの近くに、標高1,881メートルの、ケールシュタイン山がある。
[ケールシュタイン山]
その山頂に、ただ一つ、ナチスの遺産が残っている。
ケールシュタインハウス。
ヒトラーの50歳の誕生日に、ナチスの高官が贈ったティーハウスだ。
[ケールシュタインハウス]
このケールシュタインハウスへは、今でも専用道路と、豪華な装飾を施したエレベーターを使って上る事ができる。
山頂のティーハウスには、今もムッソリーニがヒトラーに贈った暖炉と、占領した連合軍のいたずら書きが残っている。
アルプスの山々と、眼下にケーニヒス湖を見下ろすテラスでは、紅葉が終わり、そろそろ雪が降る頃だろう。
【画像出典】