会社を辞めることがアイデンティティの危機
となる場合がある。
喪失がもたらす内的状況への不適応で、恨み
や悔やみ、悲しみや怒りといった様々な感情
が繰り返し襲ってくる。
この状態は喪失を受け止め、自分の中で折り
合いをつけるまで続く。
フロイトはこれを「悲哀の仕事(mourning
work)」とよび、避けて通れない重要なプロ
セスとした。
そして、これまでの仕事を失うとき、仕事と
ともに失われるのは収入だけではない。
仕事を通して成し遂げようとしていた夢、社
会的成功、生活の安定、人間関係が失われる。
さらに会社は自分を守ってくれるという信頼
感も打ち砕かれる。
会社への愛着や依存が大きければ大きいほど
「悲哀の仕事(mourning work)」は大変な
ものとなる。
前向きに行動することは重要だが、悲哀の仕
事をないがしろにするといつまでも喪失に伴
うネガティブな感情が消えない。
湧き上がる感情を抑圧せず、経験し尽くすこ
とが必要なのだ。
苦しくても、いずれ自分の感情を客観視でき
る時がくる。