悲しい事があります。

夏が終わってしまう、ということです。


夏が終わってしまって悲しい。

なんだか青春真っ只中の感受性豊かな少年のようなセリフですが、

そんなことはありません。

書いているのはセックス大好きながら、実生活では

そこまで性生活が充実していないことを痛感している、

悲哀にまみれた中高年です。


そんな中高年が、

一体夏が過ぎてしまうことで何がそんなに悲しくなるのか。


なにも、海水浴や花火、夏休み、キャンプ、浴衣、水着、ビキニ、

クーラーと自堕落な性生活、怠惰な同棲日焼け痕、野外セックス、

蚊取り線香、スイカ、冷やし中華、セミ、汗のにおい、動物のニオイ、

そういったキーワードで充満していた夏というビッグシーズンが

過ぎていくことを悲しんでいるのではありません。


悲しいのは、ここ数年、夏になると登場する、

いわゆるブラック加糖といわれるタイプの缶コーヒーが

そろそろベンダー各社の自動販売機から姿を消しつつある、

という事実が、ワタクシを非常に悲しくさせているのです。


ブラックで加糖、というと

なんだかアンビバレンス、矛と楯、パパイヤパラノイヤ、

といった気もしないでもないですが、

いわゆる中身はミルクの入っていない、

コーヒーと砂糖なんかの甘味料だけ、というタイプです。


まあ、ミルクやらカゼインやら増粘ナンチャラ剤やら

その他諸々入っているタイプの、スタンダードな缶コーヒーも

嫌いなわけではありません。


しかし、そういう混ぜモノが多すぎる缶コーヒーというものは、

飲んだ後のアトクチが、かなり嫌~なものになってしまうものが多く、

まあ、できうることならそういった混ぜモノが入っていないタイプのものの方が、

やっぱりアトクチもさっぱりしているものです。


そりゃあ、自分でキチンと炒れるなり、

喫茶店に行くなりすれば、そういったコーヒーもいくらでも飲めるのですが、

人間というものは欲の深いもの、便利な自動販売機で、

そういったちゃんとした味を経験してしまうと、

そういう経験を特別なものではなく、日常で繰り返したくなってしまうのです。


しかもアイスコーヒー!


ワタクシ、1年間で摂取するコーヒーのほとんどはアイスコーヒーという、

日本に生まれてよかった!そしてコーヒー通の方からは鼻で笑われかねない

嗜好の持ち主なのです。


ゆえに春から夏へ向かう時期、

梅雨も明けようかというある日、いつもの場所にいつもある、

見慣れた自動販売機を見るともなしに見上げた瞬間、

目に飛び込んでくるブラック加糖タイプの感コーヒーのディスプレイ。


だいたいパッケージのデザインは青っぽい色合いのものが多く、

量も一般の缶コーヒーのスリム・ショートタイプではなく、内容量多め、

たっぷり太めサイズのものといった傾向でしょうか。


それを見つけた瞬間、

フライング気味ながらワタクシの夏は始まりを告げるわけです。


が、悲しいかなブラック加糖タイプはすべからく「夏季限定」。


毎日毎日愛飲するうち、

長年連れ添った妻との中高年らしいセックス のような

安定と倦怠の入り混じった状態が続いているのですが、

ある日突然、その関係にも終わりがやってくるのです。


「売り切れ」そして新商品ラインナップ。


なにせ夏季限定。

売り切れはその年の終わりを意味しますし、

新商品ラインナップもそう。


入れ替わりにどんな新商品が並べられようとも、

ワタシのココロの隙間は埋めてくれません。


そう。

倦怠も含めて、別れて始めて

愛していた事を悲しく再確認してしまうわけです。


まあ、妻なんていた経験ありませんが。