久しぶりに穏やかな日だった
夜に
散歩に出たら、コンビニの脇に車が停まっていて
それがまるで花吹雪のなかを通り抜けてきたような佇まいだった
蒼白く浮かぶ車体は、全体に薄紅の花びらを纏っていた
夕方に通り雨があった、ガラス越しの光は濡れたアスファルトにも反射する
一帯は複雑な陰陽を描いていて
宵の墨色と蒼とピンクが蛍光灯の白に融けて
ちょっと不思議だった
そして急に哀しくなった
風が
吹いたようだった
最近何を見ても聞いても涙ぐむので困る
(老化現象だろうか)
目を逸らしたら学ランを着た男の子が大き過ぎるカバンを頭上に抱え上げていた
彼はたぶん、この一年以内に驚くほど背が伸びるに違いない
そんな感じだった
ふっと昔に引き戻されるような感覚を覚え
不可能を知る
やっぱり哀し過ぎてしまう
わたしはさらに目を逸らす
不動産屋のビルのてっぺんに、その文字が赤々と光っている
不 動 産 の三文字を順にたどり、それが滲まないことを確かめてから
ゆっくり私は視線を下ろす
今を
これからに向かって私はあるべき
懐かしむアルバムは未完成で、あるべき
(の、はずだ)
それを完成させるべく
私は生きている
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