前回まで、

 

引き続き「花様年華(ふぁやんよんふぁ)-人生の花咲く瞬間」( 2020 tvN )がお題。

 

尚、最近のドラマなので“ネタバレ無し”を心がけたいと思います。

 

このドラマには、とても多くの暗喩が散りばめられています。

上記画像も「初恋」に欠かせない「夕立」。

 

元ネタは教科書に載るほど知られた、ファン・スンウォン(黄順元)が 1952 年に発表した短編小説「夕立ち」。

 

若いユン・ジス(チョン・ソニ)とハン・ジェヒョン(ジニョン [ GOT7 ] )が出逢う桜吹雪。

 

大人になったユン・ジス(イ・ボヨン)とハン・ジェヒョン(ユ・ジテ)の出逢いは雪(吹雪)。

 

スチルでは分かりにくいですが、クロスフェード(画像入れ替え)がとても正確。

こうした凝った画作りは手間と時間がかかるため、日本ではあまり見なくなりました。

 

また、多くのドラマに登場する決めセリフ、「ちゃじゃった(探した/見つけた 찾았다 )」が欠かせません。

 

大雪でふたりが泊まる民宿にどこか見覚えが…

 

映画「リトル・フォレスト 春夏秋冬」( 2018 )ヘウォン(キム・テリ)の家でした。

慶尚北道 軍威郡 友保面 美城里 927-1 (友保面 美城 5路 58-1)

( 경상북도 군위군 우보면 미성리 927-1 [ 우보면 미성 5길 58-1 ] )

何時か訪れる時のためのメモ。

 

「リトル・フォレスト」は 2002-05 年「月刊アフタヌーン」に連載された五十嵐大介の漫画作品。

 

この漫画を原作とする「リトル・フォレスト 夏/秋」「リトル・フォレスト 冬/春」 4 部作が 2014-15 年に日本で映画化。

 

更に「リトル・フォレスト 春夏秋冬」として 2018 年に韓国で再映画化。

 

おまけ

民宿のおばさん(チュ・プジン)とのやりとりがもう傑作。

 

「ドラマを観てれば何でもありになる」という達観。

 

チュ・プジンは、数多くのドラマに多彩な役柄でワンポイントリリーフ。

もう「チュ・プジンを探せ」が出来るくらい(笑)

 

「キムチでビンタ」といえば「みんなキムチ」( 2014 MBC )ヒロイン母(イ・ヒョチュン)のフルスイングが伝説ですが、時期的に「品位のある彼女」( 2017 JTBC )ボクジャ(キム・ソナ)の品位の無い報復かな?

 

YouTube って便利、当該シーンを発見。

 

「みんなキムチ」の伝説的場面。

 

「品位のある彼女」 1'40" あたりから。

 

民宿での会話(「キムチでビンタ」にあらず)に慌てたジスが、手に棘を刺してしまいます。

ジェヒョンが遠慮がちに「僕が見ても良い?」と手を取ります。

 

この場面が  (リフレイン)

 

1993 年、デモに巻き込まれて転び、怪我をしたジスを手当てするジェヒョン。

 

ジスとは腐れ縁の同期生、音楽バーを経営するチョ・ヨンウ(イ・テソン)が慌てて怪我をし、ジスが同じように手当てをします。

 

上記場面に至るシークエンスが秀逸。

考え事をしたくない空き時間をやり過ごすため、ひとりカラオケをするジス。

 

ここでの選曲が、よりにもよってチャン・ヘジンの「1994年、ある夜遅く」。

( 장혜진-1994년 어느 늦은 밤 )

今夜 あなたに
言葉では 伝えられないから
思いを紙に 託す事を許してね

長いこと あなたに
怖くなるほど 夢中だったの
そんな私の姿を 今は


少し悔やんでいる かもしれない

でもね あなた
ほかの事は 全部忘れてしまっても

これだけは 覚えておいてほしいの


私があなたを どんなに愛していたか
愛していたのかと

結局思い出すのは「初恋の瞬間」ばかり。

 

しかもチャン・ヘジンが、このドラマの OST 曲「きみと(いう)季節は」を歌う仕掛けつき。

 

 

前回もネタにしましたが、このドラマには映画が頻繁に登場します。

 

観葉植物を抱えたイ・ヨンミン(コ・ウリム)を見つけたジス。

「まあ『レオン』みたいね。」

 

ヨンミンは意味が分からず「『レオン』って何?」

「うーん、格好良いおじさんよ。」

全く説明になっていません。

 

1995 年、映画「レオン」を観た勢いで観葉植物を買ってしまうジス。

右端の悪友イ・ドンジン(ウン・ヘソン)も、すっかりその気のコスプレ。

「レオン( Léon )」( 1994 仏/米)

観葉植物を抱えた孤独な殺し屋の物語。

この場面を含め、大学時代の登場人物たちが行き来する街角は、1990 年代の常設セットが無いため、巨済(こじぇ)市の鄙びた商店街を借り切っての大掛りな撮影。

 

 

酔ってコンパを抜けたジェヒョンを見つけるジス。

「先輩だけ見てるから何でもお見通しです。」

「『ラブレター』と思ったら『ミザリー』かよ。」

「 Love Letter (ラブレター)」は、前回取り上げた 1995 年の日本映画。

今では韓国ドラマに必須の要素「雪、初恋、亡き人を想う」を決定づけたといわれます。

 

以前ネタにしました。

 

「ミザリー( Misery )」( 1990 米)は、モダンホラー小説の大家、スティーヴン・キング( Stephen King )の同名小説が原作。

歪んだ愛情から相手を密室に束縛するストーカーの話。

 

「『ラブロマンス』だと思っていたら実は『サイコホラー』だった」。

物語を象徴するセリフだったりもします。

この場面には続きがあり、酔いつぶれたジェヒョンをジスが担ぐ破目に陥ります。

内緒で抜け出したため、助けが呼べません。

 

25年後、酔いつぶれたジェヒョンをジスが再び担ぐ破目に。

 

字幕ではおそらく省略されますが、ジスのぼやきが傑作。

「もう、『ラーメン食べてく?』とか誘ってもいないのに、どうしてこうなるの。これはきっと事故みたいなもの、不可抗力の事故に違いないわ… 」

 

「ラーメン食べてく?」は、登場しないドラマは無いと言える程の決めセリフ。

異性を部屋に上げる口実です。

 

実は「ラーメン食べてく?」を、ジスは別の場面で言っています。

 

ところがこれにはひねりがあり、「ラーメン食べに行きますか?」が近そう。

 

結局、コンビニでカップラーメンをすする健全さ。

 

このセリフ、今回は特別な意味を持ちます。

 

伝説的セリフを初めて発したのが、映画「春の日は過ぎゆく」( 2001 )のウンス(イ・ヨンエ)。

この時の言い回しは「ラーメン食べますか?」。

 

部屋に上がるサンウを演じたのが、何とジェヒョン役のユ・ジテ。

そう、ユ・ジテはラーメンに釣られた男第一号なのでした。

 

ジェヒョン=ユ・ジテの曖昧な笑みが、何だか別ものに見えてきます。

(嗚呼 20 年の時を経て、俺はまた釣られてしまうのか… とか何とか)

 

「ラーメン食べてく?」と「春の日は過ぎゆく」を、以前ネタにしました。

 

けれども元祖ラーメンに釣られた男、転んでもただでは起きません。

 

めげずに「今時の若者風に言えば『今日が交際 1 日目』だね。」

ジス「そんな事をしたら私たち、きっと皆に石を投げられます。」

ジェヒョン「石なんて全部、僕が受け止めてみせる。」

 

ジス「もう、『アイアンマン』じゃないんだから… 」

ジェヒョン「平気さ、きみがいるから。きみが僕の『パワードスーツ』だから。」

 

ジス「それじゃあ全部、私が受け止めるのと同じだわ。」

 

このふたりの会話は核心を突きながら何処かずれていて、ちょっと笑えます。

また、過去にも同様のセリフを発した実績あり。

 

いい加減長くなったので、あとひとつ。

 

ジスがトラウマに怯えるトンネル。

 

映画「パラサイト(寄生虫)」( 2019 )にも登場した紫霞門(ちゃはむん)トンネル。

 

どうしてこう、ストーリー以外のところばかり見てしまうのか。

自分でも呆れてしまいます。

 

続きは… 今のところ未定です。