前回、 韓国ドラマに登場する日本車についてネタにしました。
そこで今回 HDD に残るドラマを早送りして、登場した車をピックアップしてみました。
何しろ出典が手許の HDD レコーダなので、統計的な意味は全くありませんが、こんな車が出演しているのかとでも思って眺めてください。
 
まず前提として、韓国国内の自動車メーカーは現在5社。
そのシェアは大体こんな感じ。
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まずは国内シェア1位のヒュンダイが車両を全面バックアップしたと思われる、
2016年のドラマ「太陽の末裔」(KBS2 水木ドラマ 平均視聴率 28.6%)。
 
公用車なのか私用車なのかよく分からない設定ながら、最も頻繁に登場したのが中型 SUV の「ヒュンダイ・サンタフェ ( Hyundai Santa Fe ) 」。
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脇役用に旧型モデルまで登場させる念の入れようでした。
 
事故を起こしたり、悪役が乗るのはライバルの○○車なんてよく云われますが…
 
今にも崖から落っこちそうなのは、三菱の初代「パジェロ」かと思いきや、実は…
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’90年代のヒュンダイ「ギャロッパー (Galloper) 」でした。
三菱との技術提携による、パジェロをベースにしたライセンス生産車です。
 
ギャロッパーは結局海に落ち、レッカーされる羽目に。
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よく見ると、装着タイヤが何故か 「 Bridgestone 」。
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悪役さんだって律儀にヒュンダイ車。
こちらも三菱「デリカ・スペースギア」ではなく、
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ヒュンダイ「スタレックス (Starex) 」。
デリカ・スペースギアをベースにしたライセンス生産車です。
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ちなみに、パジェロとデリカ・スペースギアはシャシーがほぼ共通。
’90年代の韓国の自動車生産事情が、何とはなし透けて見えるのでした。
 
余談ですが、劇中でヒロインが発する「中二病」は、まんま「ちゅうにびょう」。
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屁理屈をこね、言う事を素直に聞かない女の子を嘆く場面です。
こういう概念の直接輸出には、何とも複雑な心境になってしまいます。
 
 
シェア2位のキアが登場した、2016年の「また、オ・ヘヨン」(tvN 月火 平均 6.9%)
漢江を渡るのは、1.6L クラスの小型車「K3/フォルテ (Forte) 」
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このドラマ、登場人物の車は全てキアで統一されているようでした。
こちらは中型 SUV の「ソレント (Sorento) 」。
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あれ?ソレントって、一枚目のヒュンダイ・サンタフェにそっくりと思った方は鋭い。
 
こちらが「太陽の末裔」に登場したヒュンダイ・サンタフェ。
上級モデルの「サンタフェ・ザ・プライム( Santa Fe The Prime )」
 
キアはシェア2位の自動車メーカーですが、1998年に経営が破綻。
現在はヒュンダイの傘下にあり、両社は主要パーツの殆どを共通化しています。
そんな訳で、ソレントとサンタフェは兄弟車みたいな位置付けです。
 
ついでに両社のシェアを合計すると、実に 79% と市場をほぼ独占状態。
やはり自動車産業は規模がモノをいいます。それにしても恐るべし現代グループ。
 
余談ですが「太陽の末裔」の主人公ユ・シジン大尉(ソン・ジュンギ)が乗る、サンタフェより少し小さな「ヒュンダイ・ツーソン( Hyundai Tucson )」はドラマ効果で売上が上昇したとか。
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シェア3位の韓国 GM は、2014~15年の「伝説の魔女」(MBC 土日 平均 24.7%)に登場していました。
 
2~2L クラスの中型 SUV 「シボレー・キャプティバ (CHEVROLET Captiva) 」。
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韓国 GM の前身は、大宇グループ (Daewoo) の自動車部門。
大宇はかつて韓国2位の企業グループでしたが、1999から2000年にかけ経営破綻。
(ちなみに当時の1位は上記の現代グループ)
GM が大宇自動車を引き受け、現在では主にシボレーブランドを製造しています。
 
2014年の「運命のように君を愛してる」(MBC 水木 平均 9.8%)に登場した、軽みたいな1ボックスバンは、大宇時代の1991年から生産の続く「ダマス (Damas) 」。
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ダマスは、スズキの2代目エブリイ(8代目キャリイ [DA])をベースとした、ライセンス生産車でした。
’80年代のスズキと GM の提携に始まる、数奇な運命を辿る一台です(大袈裟)。
日本の軽自動車規格よりやや大きい 0.8L エンジンを搭載し、LPG 仕様、7人乗り仕様などもあるようです。
 
ところで GM の高級車といえば、何といっても「キャデラック (Cadillac) 」。
 
「運命のように君を愛してる」の中で、庶民組の愛車が軽のダマスなのに対し、お金持ち組はどーんと運転手付きの「キャデラック CTS」。
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キャデラックは、統計上は韓国 GM とは分かれていて輸入車扱いのようですが、販社の関係なのか、韓国 GM (シボレー)とセットで登場する事が多いようです。
上述の「伝説の魔女」でも、やはりお金持ち組はキャデラックでした。
 
また、ドラマ内に芸能人が登場する場合、その愛車は必ず「シボレー・エクスプレス ( CHEVROLET Express ) 」。
ちょっと古い、2011年の「最高の愛」(MBC 水木 平均17.4%)
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ただし、芸能人ご用達のミニバンはシボレー製とはいえ、艤装メーカーによるカスタムメイドが殆どです。
 
更に、シボレーバンはドラマが進むにつれ出番が減少し、協賛メーカーの車にいつの間にか乗り換えるのがお約束です。
「最高の愛」で主人公が主に乗り回すのは、インフィニティ M 37 でした。
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シェア4位のサンヨンは、メインではあまり見ないのですが、権力者やお金持ちの乗る運転手付きの大型車として、「チェアマン (Chairman) 」がよく登場します。
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チェアマンは、メルセデス・ベンツの技術を援用して生まれた異色のセダン。
メルセデス製 V8 エンジン搭載モデルなどもあり、’90年代末の登場以来、高級車の代表格のようです。
 
2012~13年の「いとしのソヨン」(KBS2 土日 平均 33.3%)では社長専用車でした。
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「いとしのソヨン」で主人公たちが乗る車は、
(左)「プジョー (Peugeot) 3008」、(右)「シトロエン (Citroën) DS4」のフランス勢。
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フランスといえば、国内メーカーシェア5位のルノーサムスンもあるのですが、上手く見つけられませんでした。
 
追記;
ルノーサムスンが見当たらないと書きましたが、「いとしのソヨン」の後半、それまでシトロエン DS 4 に乗っていたヒロインが、お金持ちの家を出た後に購入した中古車が、旧型、2007~10年のルノーサムスン SM 5 でした。
このモデル、タクシーでよく見かける気がします。
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SM 5 のシルエット、何処かで見た事があるようなと思ったら、日産「ティアナ」をベースとする、ルノーのいわゆる世界戦略車なのでした。ルノー+日産の連携を意外なところで発見しました。
 
話を少し戻し、上述の「プジョー+シトロエン (Peugeot Citroën) 」は輸入車中10位、
シェア 2.2% くらいのポジションですが、ドラマ協賛ではかなり健闘している印象です。
 
2016年の「家和萬事成 (ハッピーレストラン)」 (MBC 土日 平均 15.8%)にも、
「プジョー308」が登場していました。このシーン、運転中にパニックだって。何て危ないんだ…
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余計な事ですが右端の黒っぽい車、三菱の初代「RVR」だと思った方は甘い(^^ゞ
2代目「シャリオ」だと思った方は惜しい(^^ゞ
’90年代の三菱シャリオをベースとしたヒュンダイ「サンタモ (Santamo) 」に、RVRの外装を装着した「サンタモプラス (Santamo Plus) 」です。
ヒュンダイと三菱の結びつきは、かように深いのでした。
 
そうそう、上述の「最高の愛」の中で、ヒロインの落ち目のアイドルが乗る車はシボレーバンでは無く、古びたサンタモでした。
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韓国における輸入車のシェアは自動車市場全体の内、概ね 15% くらい。
その中での1位は「メルセデス・ベンツ」。輸入車中の実に 31.5% を占めます。
 
首位の余裕なのか登場頻度は思いの外低く、
2015年の「リメンバー 息子の戦争」(SBS 水木 平均 15.0%)の中で、悪役の車として「ベンツ SL」が登場していました。
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たとえヘッドマークを隠しても、ベンツの外観はあまりにも特徴的です。
 
輸入車の2位は、27.5% を占める「BMW+ミニ」。
 
最上級モデルの「i8」で、保育園から子どもを連れ帰る御曹司。
2016年の「結婚契約」(MBC 土日 平均 16.0%)に登場していました。
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チャイルドシートの装着義務が無いからこそ出来る技かなあ。
 
輸入車3位は、日本勢の「レクサス+トヨタ」。
上位二社のドイツ勢から少し水を開けられ、シェアは 10.2% です。
 
2016年の「シンデレラと4人の騎士」(tvN 金土 平均 3.5%)で、御曹司が乗り回す
「レクサス LS」
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そうそう、人を探して夜の街を疾走すると、必ず見つかるのは昔からのお約束。
 
輸入車4位、シェア 5.7% の「ジャガー+ランドローバー (Jaguar LandRover) 」の英国勢。
 
2016年の「空港に行く道」(KBS2 水木 平均 8.4%)の中で、主役の旧家のひとり息子の愛車として、ジャガーの SUV 「F-PACE」が登場していました。
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その妻の車は「レンジローバー・イヴォーク (RangeRover Evoque) 」。
相当に豪勢な組み合わせです。
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このドラマはタイトルから想像出来る通り、飛行機関連も頻繁に登場します。
飛行機パートはエアアジアが全面協力していました。
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この飛行機ネタも突っ込みどころ満載なのですが、長くなり過ぎるのでパス…
 
また、主人公の発するこんなひと言もありました。
 
辛い出来事続きで落ち込む主人公を少しでも慰めたいヒロイン(上記エアアジアのベテランCA)が、差し入れを主人公の友人に託します。
ヒロインからとは気付かぬ主人公、折角届けてくれた友人に、如何にも気が利かない奴といった風情で…
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「日本のビールとか持って来いよ。こんな時には日本のビールだろ。」みたいに言い放ちます。
旧家のお坊ちゃんでインテリ系なので、ビールにもこだわりがあるようです。
まあこの直後にヒロインからだと気付き、態度が一変するのですが(^^ゞ
 
次は輸入車7位、シェア 4.0% の、前回ネタにした 日本勢「インフィニティ+日産」。
 
2016年の「オー・マイ・クムビ」(KBS2 水木 平均 6.1%)の中で、娘を取り戻しに来た実母が、見栄を張って養母の家に乗り着けた大型 SUV 「ムラーノ」です。
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ヘッドマークが日産と区別しにくいとも云われる、
輸入車8位、シェア 3.3% のスウェーデン車、「ボルボ (VOLVO) 」。
 
2016年の「子どもが5人」(KBS2 土日 平均 27.2%)に「V40」が登場していました。
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拾い出せたドラマ内の車両は、大体こんな具合でした。
 
結論として、かなり万遍なく登場する印象です。
 
また、以前は登場する車がセダン中心だったのに、現在では SUV の登場頻度が高いという特徴もあるようです。
 
このあたりは市場人気の反映なのか、メーカー側の思惑か、どちらでしょう。
 
こうして見てきたところ、露出度の低いメーカーがいくつかある事に気付きました。
 
まずは上述した国内メーカー5位のルノーサムスン。
インフィニティ+日産とルノーの複雑な関係や、国内販売よりアジア戦略を重視した方針などが関係するのかもしれません。メインで登場するドラマが見つかりませんでした。
 
ここで、割と最近の韓国における輸入車シェアの一覧。
輸入車は台数が少ないので、時期による順位の変動がかなりあります。
 
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以下略
 
ちなみに「アウディ+フォルクスワーゲン」は2016年に色々あり、現在販売停止中。
 
上記の表中に記載がありながらここまで登場していないメーカー、
 
輸入車5位(シェア4.9%)の「フォード」はあまり見かけません。
 
2002年の「冬のソナタ」で、ペ・ヨンジュン演じる主人公イ・ミニョン/カン・チュンサンの愛車として登場した「エクスプローラー (Explorer) 」が注目された事もあったのに…
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日本撤退に象徴されるフォードのアジア戦略が、もしかするとこんなところにも、影響しているのかもしれません。
 
また、輸入車6位(シェア4.5%)、日本勢2番手の「ホンダ」もあまり見かけません。
販売戦略の違いや、販社の思惑などがあるのでしょうか。
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ホンダのオートバイは、ドラマ内でかなり頻繁に見かけるのですが。
 
「学校 2017 (恋するレモネード)」(2017 KBS2)に登場した「ホンダ CBR125R」。
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更に、「クライスラー」の属する FCA* も、
9位のクライスラー+ジープ(3.0%)以外はトップ10から漏れています。
 
* 「フィアット・クライスラー・オートモービルズ」
フィアット、アルファロメオ、アバルト、ランチア、マセラティ、クライスラー、ジープ、ダッジなど
 
更に更に、「ポルシェ」がトップ10に入っていないのは、とても意外な印象です。
 
2013~14年の連続ドラマ「ルビーの指輪」(KBS2 月~金 平均14.4%)で、ヒロインの愛車が「フィアット500 (FIAT 500)」でしたが、イタリア車はいまいち人気が無い?
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追記;
イタリア車は人気が無い?なんて書いておきながら、「トッケビ」(2016~17 tvN)では、イタリアの「マセラティ (MASERATI) 」が登場していました。
トッケビ=キム・シンが乗る SUV の「レヴァンテ (Levante)」。
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ドクファは、レヴァンテよりお高い「グランカブリオ (GranCabrio)」
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以上、全く何の役にも立たない韓国ドラマの自動車事情でした。
 
おまけ
 
韓国ドラマの歴代視聴率5位、62.7% を叩き出した1995年のドラマ「若者のひなた」。
 
その中で通行人にわざと水を跳ね上げる迷惑な車は、同年に販売が開始されたばかりの最新型、ヒュンダイの「アバンテ/エラントラ (Avante/Elantra) 」。
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ペ・ヨンジュン演じる御曹司ハ・ソッジュ兄妹の車として登場していました。
ちなみに盛大に水を跳ね上げているのは、ちょっと意地悪な妹のほう。
このドラマ、今観直すと何故そんなに高視聴率だったのかよく分かりません(^^ゞ
 
アバンテ/エラントラは 1.5~2.0L クラスの乗用車で、このモデルで三菱からの技術導入を脱し、エンジンを含め独自設計になったとされています。
え、4代目「ミラージュ(CA/CB)」そっくりだって? それは言わないのがお約束(^^ゞ
 
 
こんな事をしていると一体ドラマの何処を観ているのか、自分でも分からなくなってしまいます(笑)