●ツッこむ●
夢の中で妖怪と戦っていました。苦しみながら戦っている、僕自身も妖怪です。僕がどんな妖怪だったかというと、『子泣きばばあ』。がっばと起きた瞬間に放った『フツー子泣きじじいだろ』。それが今週最初の言葉です。
●概念を知る●
恐い夢を見ると、幼い頃のある記憶がまざまざと蘇ります。『人間のような意思を持つ、白い猫に追いかけられる』という夢を見た時のことを。夜中に泣きながら目覚めた僕を若き頃の母がなだめたのです。恐いユメを見たのね、と。
恐いユメ? 当時、僕はそもそも夢というもの自体を把握していませんでした。
『恐いユメのことをね、アクムっていうんだよ』
アクム。世の中にはとてつもねーものがあるんだな、と幼心に思ったものです。
●未知を知る●
『夜中』と『母』というキーワードで思い出しましたが、幼い頃の恐怖の記憶はもうひとつあります。その時の僕は、部屋で一人で寝るくらいの年頃になっていました。ただ、それでも夜中にトイレに行くには多少なりの勇気がいる、そんな頃です。
深夜、廊下を通ってトイレに向かう僕。物音ひとつしません。勇気をふりしぼって歩いていくと、トイレからぬぅっと出てくる人影があります。僕は背筋が凍りました。よく見ると、それは半分寝ぼけた母です。『ヒビらせんなよ』と一人思いながら、母が去ったトイレに向かいます。ただ、なにか心にひっかかるものがあります。なにかがちがう。恐怖の予感。それは今から思えば、『無音』だったのです。
トイレに入りました。一歩、便器に近づきます。見下ろします。すると、便器が、便器にたまった水が、真っ赤な血の色で染まっているのを見て、まだ女性の体の仕組みを知らない僕はその場で崩れ落ちてしまうほど恐怖におののきました。