……………平日の昼間。
華裏那は六本木にある高層ビルディングのオフィスにいる。
麻衣と同じく、自らがロボットであることを悟られないように日常を送る。
麻衣と違うのは……………
何かにつけてバレないように右往左往するのではなく、常に落ち着いた佇まいな部分だ。
そもそも、学生のように規則や学校特有のスケジュールに縛られない。
六本木のオフィスも、店舗名を変更してあるが実態は国際政治結社「ISRO」(イスロ)の日本支部である。
当然ながらオフィスに待機する職員達も華裏那の事情を共有しており、秘密は堅く守られている。
華裏那のメンテナンスも専属のエンジニアが常駐しており、ここで全て行われる。
居住場所も、このオフィスの階の一室を提供されているのだ……………
アフターファイブや週末にはドライブが欠かせない。
車はイスロから提供されている、国内最大メーカーの日本車で3ナンバーのスポーツカー。
華裏那のお気に入りは首都高湾岸線に乗って横浜で降り、某埠頭で夜の海を眺めるコースだ。
華裏那が人間として生まれたのは、日本より遥か南の東南アジア某国だ。
幼い頃に母親と死別し、父親の故郷である日本へ来た。
ロボットとなった今も、その望郷の念は残る。
週末となると。
そこへは様々な人がドライブに立ち寄るが、中にはガラの良くない連中が群れをなすこともある。
華裏那が埠頭に車を停めて海を眺めていると、そうした連中が寄って来た。
「お!こんなとこに超美女発見!!」
「みんな来てみろ!美女だよ、美女!!」
「お姉さんヒマなんだ?ちょっと!
いいかな」
5、6人の男に車を囲まれた。

「あいにくだけど、一人でいたいの。
他あたってね」
華裏那は余裕ある表情で男達をいなす。
「お姉さん、それないっしょ!?
ヒマなんだろ?俺らと遊ぼうよ」
「ティ持ちイイ〜〜♫ことしよ!!」