
総バルサ・フィルム組みで全備重量は190g。
この機体もだいぶ前に譲り受けたのだが、搭載メカが間に合わなく、この度ようやくの初フライトとなった。
小説執筆が一段落したら、行おうと考えていたのだ。

私は何十年にも渡り週末の朝に、ここでRC機フライトを行って来た。
中でも動力を持たない、ピュア・グライダーを浮かせソアリングを果たすには10:00〜12:00までの午前中の二時間という、限られた時間に発生する成長サーマル(眼下の市街地より発生し、成長した地熱上昇風)を捕らえる=サーマルに機体を乗せるに限ることを知ってはいた。
だが、この日は朝8:30には現地に到着し、谷側へ向けてLaunch (投げ発航)すること数十回。
人間同士と同じ………初めての機体の"性格”というものを知り、互いに歩み寄る為の時間と労力には時間を惜しまない。
これまでで最も小さなサイズのピュア・グライダー、しかもマスプロな販売キットではない………個人のオリジナル機。
思っていたよりピーキーで、それでいて変わったレスポンスをする「こさぎ」に、朝っぱらから手を焼いていた。
投げても機体は一向に浮こうとせず失速し真っ逆さまに落ちようとするか、一回目の旋回を終えて無事に芝へと着地させることで精一杯の時間が続く。
今日は、このまま機体の見極めで終わらせるか?それでもいいだろう…………
そう、諦めかけた時。
風向きが変わってきた。
風の温度も上がってきた………!
時計を見る………09:55。
サーマルが来るか!?
帰り仕度を始めようとしていたのだが。
もう一度、送信機と機体のスイッチをいれる。
自分の身体全体を、谷から吹き上げる風と左右から吹き寄せるモヤモヤとした風が包み込む!
(………発航ッ!!)
おもむろに谷側へ向けた機体を、斜め上前方へと真っ直ぐに投げる!
沈下しない。
高度は維持されている。
落ち着いて、絶妙な左旋回を開始させる。
ラダーを左へ切り、バンクさせた直後にエレベーターアップ操作へ切り替える。
すると。
上空で旋回を始めると同時に、高度を上げ始め……………初めて"腹”を見せた機体「こさぎ」!
乗った…………サーマルだッ!!
〈以下飛行撮影;妻〉

その後"二匹目のドジョウ”を狙っては見たものの、よりによって風向が背中越しに変わり、機体回収も困難になると見て撤収を決めた。
サーマル・ソアリングは実に三年ぶりとなった。
久しぶりに山間の土と草の匂い………そして風の匂いを嗅いだ。
サーマルは大自然の神が姿を変えて現れるものだと私は信じている。
決して、常に出現するものでもない。
"最後まで諦めなかった者”にのみ、その姿を現してくれるのだ。

………一年間にも及ぶ私の執筆活動は、決して幸福だけをもたらしたわけではなかった。
大病による、一ヶ月に及ぶ意識不明の状態は確実に私から筋力・体力を奪っていた。
この一年の文芸創作活動に専念したことについて悔いなどは無いが、本来なら家に籠り執筆を続けるなどを良しとするべきではなかったとも言われるかも知れない。
今回、久しぶりに機体を追って山を飛び回り、機体を抱えて下山し徒歩で家路に向かうという強行軍を試みたが、本当に著しい体力の衰えを思い知った。
この文芸休筆期間は、その失われた体力を取り戻す為に活用するつもりである。
一機の模型飛行機も、その友となっていくことだろう。







