10月の第二日曜日。


休日部活を使い、◯✕高校吹奏楽部は体育館のステージを借り切って、ロックバンドH・M・Sとの音合わせを開始した。


メンバーが持ち込んだドラムセット、エレキギター・ベース用のアンプ等………

見慣れない機材に目を丸くする生徒達。

更には、音出しを始めるとまたビックリ!

たった一本のエレキギターの放つ光線のような音色が体育館全体を覆い、たった一人で叩くドラムスの響きも展開も、自分達のパーカッションを軽く凌駕する。


完全に畑の違う音だ!

部員達の誰もが、そう感じる中。

更に、そこに………

慌ただしくキーボードをセットする莉奈の姿が、自分達の知る姿とは別人に見え。

不思議とも言える空間を醸し出していた。


体育館の真ん中で、吹奏楽部顧問の渡辺と………H・M・Sバンマスのマッキーこと真木の両者が、立ち話で打ち合わせをしている。

二人の中年男は、ほぼ同年代に見えた。


音合わせに至り、マッキーの"要らぬ”と言った譜面もH・M・Sメンバーに配られ。

アインこと相田、莉奈のカレシである雄馬の両ギタープレイヤーも音程を調節し出す。


ドラムスのミタ=三田は自分から率先し、パーカッション担当部員達と譜面片手に小節ごとの"擦り合わせ”を確認し合う。



この一時間程前…………


朝一番の音楽室で、部員達と莉奈は再会していた。

烈貴と美葉は、愛華カップルとのダブルデート以来だ。


音楽室の入り口に、赤いトレーナー姿で立ちすくみ…………俯く莉奈。


「………みんな。

あん時は、ホントにゴメン」


そのまま、頭を下げる。


「………あたしなんか、居なくなっても。

部には全然カンケー無いだろって、思ってたけど…………やっぱ、色々迷惑かけたはずだから。

ソレ、ホント謝りたい。

…………マジゴメン!」


莉奈の髪は、再び腰までの長さまで戻っていた。

その垂れ下がる髪の向こうから………莉奈の嗚咽が聞こえて来る。


集まった部員達は誰一人声を上げずに、そんな莉奈を見つめていたが。

その中から吉田翡翠が歩み出て、莉奈の前に立つ。


震える肩に、手をかける。


「………相川さん。

顔、上げて」


吉田の顔を見上げる莉奈の両眼は真っ赤に染まり。

頬が涙で光っていた。


吉田は、真っすぐに莉奈を見据えた。


「相川さんのおかげで、私は成長出来た。

私も………この部も。

私達が、あなたを犠牲にしてしまったの。

そうまでしないと、前へ進めなかったの!

だから………謝らなくてはならないのは………私達なの…………」


そう語る、吉田の声も次第に震え。

瞳に涙が溢れていた。



「………吉田ァァァッ!!」


莉奈は吉田と抱き締め合い、号泣した。

吉田も固く瞳を閉じ、唇を震わせていた。

部員達の間から………啜り泣きが聞こえた。


烈貴は、涙とほぼ同じ量の鼻水を垂れ流しながら二人を見つめていた。

その垂れ流しの鼻水と涙を、美葉がポケットティッシュで拭き取るのだった。



その日の音合わせ、打ち合わせは想定以上に進めることが出来た。


当初は、むしろ"オジサマ連中”の方が引け目を感じていたのだが。

吹奏楽部員達と過ごす一日で、すっかり打ち解けていた。


マッキーから勝手に

"コイツら、デキてるんだ”

と紹介された、莉奈と雄馬が赤面する。


(ああ、この人が先輩のカレシさんか!)


雄馬を初めて見る烈貴は、その容姿や、その人当たりの良い大人な様子を見。

"こりゃ叶わないや”

と、何故か?安心する。

その二人の仲睦まじそうな様子を見、美葉の方も何故か?安心する。



「みんなカワイイよなァ!

誰か、こん中からオジサンと付き合わない?」


冗談とも思えない、アインの一言に。

ミタが強く袖を引っ張る!


「オイッ!!

ガチで捕まるぞ!?」


部員達から爆笑を買う。




そうして………11月の声を聞き。


◯✕高校吹奏楽部、定期演奏会の日が………やって来た!



次回、いよいよ最終回です。


〈もう一つの雪どけ・完〉



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