「烈貴!

烈貴!?」


「………う」


正和が声をかけ続け、次第に烈貴は意識を回復して来た。


改めて明美に向き直る正和。


「何があった!?

何なんだ、一体!?」


床に座り込んだ明美は虚空を睨み付けたまま、ボソボソと呟き続ける。


「………私は、正しい。

私は………」


茉莉が、明美に駆け寄る。


「お母さん!」



正和は、苛立ちながらも諭し始める。


「幾ら何でも、子供に手を出すのはやり過ぎだ!

この俺だってしない。

何があったのか、言ってみろ!」



それまでボソボソと呟くだけだった明美が、おもむろに目を見開き。

正和に掴みかかる。


「この子が……烈貴がッ!

アバズレ女の毒牙にかかろうとしてるのよッ!?

助けるのが親の務めでしょうッ!!」


「!?」


正和は顔を引きつらせる。


「何、ワケわからんこと言ってんだオマエ!?

アバズレ女の毒牙!?

妄想もたいがいにしろ!!」


明美は、憑き物の付いたような顔で訴える。


「あなたは知らないのよッ!

自分の大事な息子が、どこの馬の骨かも知らない泥棒ネコに、食い尽くされようとしていることをッ!!

早く………早く手を打たないと、取り返しの付かないことにッ」


「アホか〜ッ!!」


すがる明美を振りほどき、正和は言い放つ。


「烈貴はな………オマエが思ってる程バカじゃねえ!!

普通に学校生活を過ごし、普通に恋愛してる普通の高校生だ。

勝手な妄想で、烈貴を縛り付けるんじゃねェ!!」


この中の、"普通に恋愛”というワーズに明美は反応する。


「普通に恋愛?

結婚する気も無い男女が、体臭をこびりつけ合う程の行為が、普通だと言うの!?

やっぱり、あなたは何もわかってないのよッ!!」


「やめて〜!!」


それまで黙っていた茉莉が、横たわったままの烈貴に近付き。

頬を張る!


パンッ!!


その一撃で、一気に目を覚ます烈貴。


茉莉の両目には、涙が浮かんでいた。


「………お兄ちゃんが………お兄ちゃんが、みんな悪いんだよ!

お兄ちゃんのバカッ!!」


茉莉は階段を駆け上がり、自室のドアを乱暴に閉めて籠もった。


烈貴は、この光景を冷めた目で見渡した。


(こんな家、やってらんねェよ)


不意に立ち上がる烈貴。


「メンドクセーから、言ってやるよ。

確かに、俺はヤった。

相手は学校の先輩だ。

オフクロが勝手に抱いてるモーソー通りに、ヤッてヤッてヤりまくった!

スッゲー気持ち良かった!!」


開き直った烈貴は、ワザと明美の目の前で卑猥に腰を振って見せた。

蒼白させた顔の目玉も飛び出さんといった形相の明美は、息も出来ずに唇を震わせている。


お構い無しに烈貴は得意げに続ける。


「でさ、あんま気持ち良くて子種がビックリする程ドピュドピュ出てさ!!

オフクロも安心だろなぁ………これで孫の顔、見せられるなぁ!って、親孝行の気分になったよ♫

あ、大丈夫、そん時はゴム使ったから。

本式に孫作ってやる時は中出しだからね♫」


正和が思わず吹き出す。


「烈貴、それくらいにしとけ」


対して明美は。

アァ!と言ったきり………目を白黒させて床に崩れ落ちた。


正和は、そんな明美を抱き抱えてベッドへ運んだ。

少し、心配になった烈貴も付いて来る。


「………大丈夫?」


「ああ、ショックを受けてはいるが………大丈夫だ。

………いずれ遅かれ早かれ、こんな日が来るはずだったからな」


烈貴は、前から訊いて見たかったことを口にした。


「ねェ………オフクロとオヤジって、余りにタイプ違い過ぎて全然合わなくない?って思ってたんだけど。

なんで知り合ったの?」


「ああ………それな」


正和は、語り出した。



続く


〈避けられぬ真実・完〉


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