ようやく揃った4人。

二つのカップル。


「………でね?

今日ってイイ天気でゲーム日和!

マジサイコー!!」


警戒を崩さない烈貴と美葉に対し、能天気顔の愛華と………少々緊張気味の陀威也。


美葉が口を開く。


「ゲームって何?

早く説明して」


そう、せかすな!と言わんばかりの余裕顔の愛華が、陀威也のマジェスティと烈貴のRG50Eを見比べて笑う。


「ま………カンタンにゆうとぉ~、キョーソーよ、キョーソー。

カレシ二人で、こっから、山の上の展望台行って帰って来るだけ。

マジそんだけ。

ウチら二人はココで待ってればいい」


「………キョーソー?」


美葉の予測した事態が、徐々に全貌を現してくる。


「ちょっと待って。

そっちのバイクの方が大きくない?

………先輩のは原付なんだから、競争したら不利に決まってるじゃん」



愛華はトボケた様子で返す。


「ええ〜?

そぅお?

ウチ、バイクのこと、あんま知らないから」


ついさっきまで緊張気味だった陀威也が、ニヤニヤし始める。


烈貴の表情は変わらない。


お構い無しに愛華は続けた。


「でね、早くゴールした方が勝ち。

でねでね、負けた方がぁ………ここのスタバで、勝った方の好きなメニュー奢り放題ってやつ。

以上でぇす♡!

じゃ、準備して」



美葉は激昂する。


「バカバカしい!

最初から自分らのいいようなルールでしょ。

こんなの、ゲームでも何でもないし。

………先輩、帰りましょ!」


美葉は烈貴に促すが、本人は。


「いや、イイんじゃない?

面白いじゃん。

やってみよう」


「………先輩!?」



想定外に余裕な様子の烈貴に、陀威也の顔が引きつる。


(なんだ?

コイツ………余裕ぶっこきやがって。

マジェがニーゴーなくらい、知らねェのか!?)


陀威也は。

ここ一週間もの間、学校をサボってまでストリートでマジェスティの変速アシストモードの"自主特訓”を重ねて来たのであった。

途中何度か事故りそうになり、また、警察のネズミ捕りに遭い辛うじて青だったがキップと減点を賜るという"痛手”まで負うなどしながらではあるが。

本人にしては満を持して、この日に臨んだつもりである。


烈貴のクールな態度に、はしゃぐ愛華。


「キャー♡!!

マジカッケー!!!

れっきさん………だっけ!?

美葉やめて、ウチと付き合わない!?

ガチで♡!」


「なに!?」


美葉と陀威也が同時に同じ言葉を発し。

なおかつ同じく顔を強張らせる。


烈貴は言い放つ。


「悪いんだけど、俺、痩せてるコはタイプじゃないから」


烈貴は本心で言っているのだが。

当の愛華は……遠回しで褒められているとカン違いし、相変わらずのはしゃぎよう。


(女は細い方がモテるに決まってんじゃん!)


そんな思い込みが愛華を支配しているのであった。


今回の"ゲーム”………というか、レースの説明をしよう。

ショッピングモール入口前を二台同時にスタートし、市内を通り抜け、烈貴が日頃から通っている街外れの丘の展望台まで走ってUターン。

再びショッピングモール入口前をゴールとして目指す。

ちなみに展望台までのルートは何処を通っても自由とするが………ほぼ決まってしまっている為、二台とも同じルートとなるだろう。

これだけでも、烈貴に勝算はあった。

幸運にも"通い慣れた道”である。

あとは………道路状況と、排気量差を埋める"何か”があればいい。


更に、展望台まで到達したことを証明する条件があった。

それは………花を一輪持ち帰ることであった。

9月………その展望台周辺には、アキノキリンソウ(麒麟草)という黄色い草花が咲き乱れる。

それを持ち帰り、自分のカノジョに手渡すことで、ゴールとみなす………

そんなロマンチック?なルールを考えついたのも、柄にもない愛華であった。


「れっきさんわぁ♡

花、ウチに手渡してほしいなぁ♡♡」


しつこく烈貴にせまる愛華に、美葉の怒りも頂点に達しようとしていた。


同じく、陀威也も。


「チキシぉぉぉぉッ!!

こうなったら、ぜってー勝ッてやるッ!!

見てろッ!?

愛華!!」



スタートラインである、駐車場の枠の一角に着く二台。


フルフェイスヘルメットを被る烈貴の側に来て、美葉は囁く。


「先輩。

こんなバカげたことで、勝っても負けても関係無いから。

………怪我とか、事故にだけは気を付けて!

無事に帰って来て!!」


「わかった!

大丈夫、心配しないで待っててくれ」


バランッ!

ガラガラガラガラガラガラガラ

美葉は………RG50Eの排気音に違和感を感じた。

いつもと違う……いや、久しぶりに聞く音!?



キュピピ

ドルッ

ドドドドドドドドドドドド

陀威也もセルスイッチで、マジェスティのエンジンを目覚めさせる。

相変わらず半キャップヘルメットは後頭部だ。


「いいかテメェ!!

万一負けることあったら、みんなテメェの財布から出すんだぞ!!」 


人が変わったように目を吊り上げ、陀威也を叱咤する愛華。

言い返す陀威也。


「そんなことよりヨォ!

約束、忘れんなよなァ!?」


「なに?

やくそくって?」


トボケる愛華に、陀威也は眉間にシワを寄せる。


「言ったじゃんよォ!?

ヤらせてくれるってッ」


愛華は聞かぬフリをする。



その愛華の右手が振り降ろされ。

戦いは幕を明けた!!


果たして………

先にカノジョへ花を手渡すのは、どっちだッ!?!?



続く


〈猛レース、スタート・完〉


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