海へ落ちる夕陽は。

7月に見た時と、然程変わらない美しさだった。


ただ、沈む速さが若干早まっていた。


互いの身体を突き抜けた、衝撃の時を過ごした二人は。

その太陽の輝きを受ける屋外シャワーで汗を洗い流し、"今度こそ”私服に着替えた。

美葉は、その着替えは別々の更衣室でしようと思っていたが………烈貴が


「着せてあげてみたい」


などと可笑しなリクエストをして来たので、美葉は吹き出しながら承諾し、結局再び一つの部屋で同時に着替える。


先に………美葉の水着を烈貴が脱がす。

まだ"賢者状態”のはずの烈貴は、落ち着いた様子でバスタオルを使い、美葉の身体の水滴を隅々まで丁寧に拭きとる。


美葉は幼い頃の風呂上がりを思い起こした。

脱衣場で、一緒に入浴した父親に身体を拭いてもらったことを………


ただ、違ったのは。

下着を履かせる時に、意外に烈貴は手こずっていたところだ。

美葉の腰、臀部、太腿は発育が良い。

それらが抵抗となり、下ろす時は引力に従う為、それ程でも無さそうだが。

第三者が引き上げる際はコツと力が要る。


「………手伝おか?」


思わず美葉が笑うと


「いや………いい」


と真剣な顔で下着を引き上げる烈貴。

広げながらの方が、やりやすいよ……と美葉がアドバイスする。


ようやく、"布”が頂上まで到達する直前。

全てを覆い隠す前に。

烈貴は"その部分”………慎ましい佇まいのクレバスに唇を寄せ、口づけする。


美葉の身体がピクリ!とする。

笑いながらも、息を弾ませる美葉。


「やめて………また、シテ欲しくなるから」


実際、烈貴自身も"そこ”に再び舌を挿し込もうとしていた。

辛うじて賢者タイ厶の継続していたことが、烈貴に理性を働かせた。

下着の装着を完了させる。


美葉はホッとした。

あの………想像を絶した、烈貴の舌による愛撫の衝撃と快感の渦に巻き込まれたら、永久に帰宅することなど出来なくなるだろう…………反面、名残惜しい気持ちも無いと言えばウソになる。


しかし、美葉は耐えた。

烈貴との付き合いは続く。

烈貴は優しい……………

オネダリすれば、またシテくれるはず。


(次回の、お楽しみにしよ♫)


そう、自分に言い聞かせながら。

随分と貪欲?になっている自分自身に赤面していた。




気温のピークを越え、海岸を流れる風も心地好く肌を撫で始める。


二人は無言だった。


畳んだポンプアップテントとアイスボックスを持つ烈貴の片方の腕に美葉はもたれ、虚ろに開いた瞳で歩く。

烈貴が持参し丹念に塗った"黄金のミルク”が効いたのか、ほとんど日焼けはしていない。


砂浜まで歩くのは、よした。

代わりに更衣室・シャワー所敷地内の、白いベンチに二人は落ち着いた。


気だるい………それでいて、心地好い疲れが二人を無言にし。

なおかつ密着させながら、刻々と進んでいく夕陽の海の輝きを見つめさせていた。


「………もうすぐ、夏も終わるね」


不意に、烈貴が呟く。


心地好いながらも、やや強めになった潮風に乱れた前髪を直しつつ、美葉は応える。


「………うん。

でも、もう夏は、お腹いっぱい」


その言葉の表現に笑いながら、烈貴は肩を寄せる美葉の髪を撫で始める。


「………俺も。

今まで生きてきて、マジ一番幸せな夏だった。

美葉ちゃんのおかげで」


すぐ間近に、美葉の顔がある。

気だるい感じの笑顔が、妙に色っぽさを醸していた。


「………私も。

………………また太っちゃうかも、幸せ過ぎて」


「構わないよ。

これからも………俺の食欲をそそってくれ」


美葉は吹き出した。


「私って………スーパーで売ってる、お肉と一緒?」


烈貴は真っ直ぐに美葉を見つめた。

その瞳に、赤くなり始めた海の輝きが映っていた。

それを見た美葉の胸も、キュンと音を立てた。


烈貴の顔が近づく。


「………全てさ。

美葉ちゃんの、お肉も。

とびっきりの可愛さも………

リスペクトするしかない、その優しさも………」


美葉も既に、口づけを待つ虚ろな眼差しになっている。


「………そして……こんな俺を好きでいてくれる、その気持ちも」


迷わず自分から唇を合わせる美葉。

烈貴は熱く応える。


ベンチで抱き締め合い、一つになった影の長さが。

近づく夏の終わりを告げていた。





8月最終週。

学級"一軍女子リーダー”

彩木愛華の自宅。


「………だからァ!

オマエ豆腐野郎か?っての!!

ま〜だわかんね?」


愛華は自称?カレシの陀威也(だいや)とスマートフォンで喧嘩中である。

及び腰な口調で言い返す、陀威也。


「だ、だからヨォ、なんでオレが、そのチー牛野郎と勝負しなきゃなんないワケ?」


内容は、烈貴&美葉カップルについてである。

彼らに対する表現は既に、"陰キャ”から"チー牛”へと昇格していた。

会ったことも無いクセに。


自室ベッドに寝転び。

コンビニで買ったスターバックスのカフェオレに刺さるストローを噛みながら、電話しながらも上から目線の愛華。


「何度もおんなじコト言わすなっつの。

オマエ、デカいバイク乗ってんだろ?

向こう、原チャだろが。

おもいっきし叩きのめしてグゥの字も出なくすりゃイイんだっつの!!」


愛華の言い分は、こうだ。

陰キャのクセにカレシ作って"リア”というだけでも目障り。

それが噂によると、かなりアツアツという………

更に勝手なことに、この自分からの呼び出しをシカトされた……などと言う妄想・カン違い。

それらが積み重なり?これまた自分勝手な思い込みで、プライドを美葉に傷付けられた………

その怒りの回収手段として。

登校の始まってから改めてダブル・デートに誘き寄せ、そのメインイベントとしての

"カレシ同士・ガチレース”

というものを………これまた愛華は勝手に企画したのであった。


ゴツいビジュアルながら、もともと"豆腐メンタル”な陀威也も。

さすがにこの、愛華の企画はムリがあると及び腰なのだ。


「確かに、オレのマジェスティ、ニーゴーだけどよォ………

向こうの乗ってるのって原チャつっても、`80年代のヤツだってんじゃね?

ガチで100キロ以上出るって!

いっくらマジェスティでも街中じゃ、勝てねェべ!?」


噂は尾ビレを付けるもので。

確かにRG50Eは100km/h近い最高速を誇るが、"以上”かどうかは微妙だ。

しかし、さすが陀威也。

バイク乗りの男だけあり、知識だけは有る。

だが………そんなことが愛華に通じるワケは無い。


「ウダウダ言ってんじゃねーよ!!

ヤルか!?

ヤラねェのか!?

ヤッたら、ヤらせてやるよ」


「マジッ!?」


途端に陀威也は俄然"ヤる気”を出す!


当の烈貴&美葉カップルは未だ知る由も無い………嵐の休み明けが待ち受ける!!



続く


〈夏の終わりは天国と……地獄?・完〉


🎁GEKKO様贈呈 RG50Eに跨る美葉


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