正午近くなっていた。
お盆過ぎとはいえ、陽射しも強さを増してはいたが………ずっと"海中遊び”に興じていた若い二人には、大して苦にもならないでいた。
天気もあってか、海水浴客も朝と比べると少しずつだが増えていて"海岸密度”も高くなっていた。
その為、二人の"微笑ましい密着行為”も目立たずに済んだ。
(クラゲが出なくて良かった)
美葉も烈貴も、心底思っていた。
相変わらず美葉を背後から抱き締め、そのふくよかさ、豊満さを賛美し続ける烈貴。
それまで美葉本人の人生にしてみれば劣等感(一方的な)の象徴であった部分を、烈貴は手や指で愛撫しては喜び、讃える。
それがウソではない証しかのように、時折熱い口づけとなって表される…………
夢のようだった。
美葉は全身で、愛を感じることが出来た。
やはり、今年、水着を買って良かった!とも思っていた。
「………お昼に、しようか」
何度目かの口づけから唇を一旦離し。
美葉は烈貴に笑顔を向け、提言する。
その中央海岸は公共の海水浴場である為、海の家といったものは無い。
それがわかった時点で美葉は、自前で昼食を用意して来ていた。
その日の朝早く、美葉はキッチンに立ち。
予め前日に買っておいたレタス、ミニトマトといった野菜を中心にミニ・サンドイッチを作った。
二人分だ。
かなり長い間、海中で戯れていた二人は。
ようやく陸へ上がった途端、身体の軽さを感じた。
ポップアップテントに入り、美葉は持参したランチボックスの蓋を開ける。
烈貴はクーラーボックスから冷えたジンジャーエールを一本取り出し、美葉に渡す。
眼前に大海を眺めながら。
潮風を浴びながらのランチタイムは、格別であった。
美葉手製のミニ・サンドイッチは野菜中心だが、スッキリとした味わいに烈貴は舌鼓を打つ。
「…………美味い!!
マジで美葉ちゃん、作ったの!?」
少しだけ照れたように肩をすくめ、美葉は頷く。
「………ホントに美味しい?」
「ウンウン!
サイコーだよッ」
次々とミニ・サンドイッチへ手を伸ばす烈貴に、美葉は感激していた。
これが烈貴への、初めての"手料理”でもあった。
それで合格点が出たのだ。
美葉手製のサンドイッチを口に含みながら、烈貴には………申し訳無い気持ちも生まれていた。
ふと、手を止める。
「………美葉ちゃん。
………俺って、変態だろ?」
「え?」
自らもサンドイッチを手にしている美葉も、烈貴のおもむろの発言に。
少し驚きの表情で見つめる。
烈貴は語り出す。
「………だって。
美葉ちゃん、こんなイイ子なのに………
俺って美葉ちゃんにエッチなことばかりしてる………
なんか、申し訳無くて」
性欲・食欲が満たされた為か?
心に"賢者”が帰って来た烈貴であった。
「………なんか………俺……男の悪いとこ取りな気がする」
そう言って烈貴は。
サンドイッチを頬張りながら、涙を溢し始めた。
そんな烈貴の様子に美葉は、少し狼狽したが。
「先輩。
………先輩が私のこと、好きでいてくれてるの………ちゃんと伝わってるから」
美葉は烈貴に身体を寄せた。
「………今日もね、ホント夢みたいな時間が、ずっと続いてるの。
………とっても嬉しいの!」
そう言って美葉は、烈貴の頬に口づけした。
「………美葉ちゃん!」
烈貴はサンドイッチを口に詰め込んだ泣き顔のまま、美葉と抱き締め合った。
もう………この子以外、考えられない!
年若き烈貴にも、決意のようなものが生まれていた。
いつかのように、夕陽まで観てから帰ろうか?とも話したが。
二人は少し早目に上がって、涼しい場所で過ごすことにした。
午後2:00。
ポップアップテントを畳んで身支度をし、二人はシャワー所へと向かう。
「ひゃっけー!!」
それまでの温かい海水と比べ。
無料だが冷たい水道水しか出ないシャワーを二人で浴び、笑顔で悲鳴を上げる。
互いにバスタオルで身体を拭き合い、すぐそばの更衣室へ。
その海水浴場の無料更衣室は建物も立派で、一部屋が通常より大きめに作ってある。
早い時間だからか、二人の他に利用する者は見当たらない。
ふと………二人は見つめ合った。
この夏で、"何かを起こしたい”………
そんな共通の思いを、互いに感じた。
「………一緒に、入ろか?」
「………うん」
烈貴の問いかけに、美葉も意を決した顔で頷く。
更衣室へ入ると………烈貴は美葉の水着の肩紐に手をかけ、たぐり下ろす。
スルスル………と、まるでストッキングが下ろされるように、水を吸って重くなった水着が美葉の足元へ落ちる。
その時に。
ちょうど烈貴の目の前に、美しく健康に育った美葉の白い腹と………
「………恥ずかしい」
"そこ”を、美葉は両手で隠す。
烈貴は立ち上がり、自身も海パンを脱ぎ下ろし。
二人とも生まれたままの姿となり、抱き締め合った。
それまでで最も濃厚な口づけを交わした後、烈貴の顔と口が美葉の首筋……肩……胸元へと降りて行き。
初めて目にする、膨らみの頂上へ。
美葉の息が、弾んでくる。
烈貴は、それを左右交互に口に含み。
飴玉のように舌で転がしては、口をすぼめて吸い立てる。
美葉は、嬌声を上げ続ける。
生まれてきて………全く経験したことの無い刺激!
思わず逃れたくなる………それでいて、続いて欲しい!
そんな矛盾した刺激に、ただただ身を任せた。
烈貴は、それまで手と指に限っていた美葉の全身への愛撫を。
唇と舌に切り替えていた。
美葉は既に。
どこを烈貴の口が這い回っても、身体中を電流が駆け抜けるような感覚に浸っていた。
息は弾み続いてる。
言葉にならない、喘ぎが口をついて出る。
まるで、自分が自分でないみたい………そんな表現そのものだった。
美葉は、怖くなった。
それは、烈貴の行為が怖いのではなく。
このまま果てしなく刺激を欲し続ける自分へ生まれ変わることに、怖さを覚えたのだった。
続く

〈海の賢者・完〉
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