8月も後半に入った。

烈貴と美葉の二人の夏休みデートが、ようやく叶うこととなった。


ただし、美葉から条件が出ていた。

それは………


美葉の水着の買い出しに付き合うことであった!!


(…………とうとう来たか!)


烈貴の胸の鼓動が高まる。

表情まで引き締まる!

ん?

何故、カノジョの水着の買い出しで、そこまでならなくてはいけないのか烈貴!?

裸を見に行くわけでもあるまい。

普通に"服を買う”のに付き合う………で、いいのだよ。


しかし、心身ともに育ち盛り&思春期の男子としてみれば"カノジョの水着選び”とは、やはり一大事なのであった!!

しかも美葉からは

「先輩も一緒に選んで欲しい」

とのオファーまで来ている。


ということはだ…………


あたかも美葉を、自分専用のフィギュア然として好きなように扱っても良い!ということか!?

美葉の、あんな姿や、こんな姿(あられもない?)………妄想が烈貴の頭を駆け巡る、駆け巡る〜!!

そうしたカテゴリーに於いて烈貴は、まさに"健康優良児”そのものであった。


振り返ると。

烈貴の仲良いクラスメイト男子、旧友男子とも未だ"リア”=リア充の者は居なかった。


一人だけイケメン&高身長の、昔からモテ男の幼馴染が居たが。

最近になって、二股どころか"八股”をかけていた(それだけでも重労働だろ)ことが相手女子全員にバレて総スカンを食らい、自業自得とはいえ本人は地獄絵図を見ることとなった。

その時は、烈貴はじめ仲間達を自宅へ招き、涙ながらに手製のカレーライスを振る舞いながら自分を慰めてもらうという"大残念会”を開催していたのが烈貴の記憶にも新しい。


他の友人メンバー達は、烈貴が美葉と正式に付き合い始めたと知ると


「リアが来た」


「リアお断り」


などと、冗談なのか本気なのか、冷たい態度を取るようになっていた。

巷では、吹奏楽部を舞台にした女子高生が主人公のアニメ等が流行っており。

それら含め、彼らはリアルよりも二次元の女子こそが正義!!と信じて疑わないのであった。


先の"八股”野郎は、真面目な顔で烈貴に忠告する。


「烈貴、気を付けろ。

女は………怖いぞ!」


それは、お前のやり方が悪過ぎただけだろ?と烈貴は言いたかったが。

自分自身も莉奈と美葉の間で揺れ動いた頃も有った為、兜の尾を締める思いもしたのであった。





さて。

デート当日、県で二番目に大きな都市N市の大型ショッピングモールに烈貴と美葉は来ていた。

その中心建物の二階にあるアパレルショップが、美葉のお目当ての店である。


男子は海パン一着なんぞ何処ででも手に入るが、女子の水着選びって………

烈貴には知らないことだらけであったが。

ああ、普通に服扱いなんだ!と知り、改めて驚く。


(てか、女性服売り場に俺って、浮いてね?)


堂々と店内で闊歩する美葉と対象的に、ソワソワ・キョロキョロしながら、たどたどしい足取りで付いて行く烈貴。

確かに女性客がほとんどではあったが、一組だけ仲睦まじそうに服選びをするカップルも見えた。


「先輩!

こっち、こっち」


美葉が手招きして呼ぶ。

水着コーナーに立っていた。


そこには。

それまで烈貴のイメージしていた"女性水着”というものの概念をも覆す、まさに"服”としてのデザイン・"服”としての機能を持つとも見られる色とりどりの品々がハンガーにかけられ陳列されていた。


烈貴………いや、男性諸氏にとっては。

女性水着、というよりは"水着を着た女性”として、代表的にはコンビニ等で販売されている雑誌掲載の所謂グラビア・アイドルの姿が真っ先にイメージされるのは致し方ない事実だろう。

そこで見られるのは100%ビキニかワンピースの、肌の露出度や体型をクッキリ拝観?可能な水着ばかりを着せられた女性モデルが笑顔を振りまく姿。


だが、実際の一般女性の多くは。

そのように自らの肌や体型を、人前で露わにすることなど潔しとしないものだ。

少なくとも、日本国内に於いては。


カルチャー・ショックに近い状態で立ちすくむ烈貴に対し、自ら吟味した水着品々を手に微笑む美葉。


「ねぇねぇ、コレ、カワイイよね?

コレと、コレも!」


美葉が選んでいるのは全て、極力体型をカバー出来、細く見え、お腹の目立たないデザイン。

烈貴の内心期待していたビキニなど、もってのほかなのだ。


「ねえ先輩、どれがいいと思う?」


とりあえず三つのハンガーを選び、烈貴へ掲げる美葉だが。

もっと露出度の高い水着を期待していた当の烈貴には、色以外はどれも同じに見え。

落胆気味に答える。


「………まあ。

どれでもいいんじゃない?」


この烈貴の反応に、怪訝そうな美葉であったが。


「ちょっと試着したいから。

一緒に来て」


と店員さんに声をかけ、試着室へ二人を案内してもらう。


商品の水着を手に、美葉が試着室のカーテンの向こうに入る間。

烈貴は一人、まるで無人島にでも取り残されたような気分で落ち着けない。


そんな様子を見て、女性店員さんが声をかけてくる。


「カップルで御来店のお客様も、たくさんいらっしゃいますよ」


そう言う女性店員さんの笑顔に、ホンの少しだけ烈貴は落ち着いて来た。


ほどなくして美葉が、一着目の水着に着替えてカーテンを開ける。


「………どぉ?」


美葉自身も、初めて烈貴に見せる水着姿に顔を紅潮させている。


目を見張る烈貴。


思っていた以上に………カワイイ!


確かにグラビア・アイドルなどとは違うが、全体的な美葉の可愛さが引き立っている様子を烈貴は、魔法のように感じた。


「………い、イイねェ!!」


素直に、そんな言葉が口を出る。


再び美葉はカーテンの向こうに戻り、次々と着替えては水着姿を烈貴に披露。

さしずめ、美葉のファッション・ショーを眺めている気分に浸れた。


最終的に二人で選んだのは。

地味なモノトーンだが、流行りの韓国風でフリルの付いたチェック柄のワンピースであった。


烈貴自身、思い直せば。

余りに露出度高い水着で美葉の豊満な身体が浜辺に晒されるのも、肉食男子のナンパや変質者の的にもなりかねないので………これくらいの選択が結果的にベストだったのだと納得出来た。


水着を買った後。

ショッピングモール内のスターバックスでキャラメル・フラペチーノに舌鼓を打ちながら二人は見つめ合う。


不意に、顔を近付けて美葉が囁く。


「………私の水着姿も。

水着の、中も………全部。

先輩のものだからね♡」


美葉のクリッとした瞳が、その時、妖しく輝いた気がした。


照れ隠しに烈貴が周りを見渡すと、夏休みの店内は。

"リア”な男女で溢れていた。



続く


〈水着選び・完〉


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