莉奈達、H・M・S の演奏曲目は続いた。

今回は全て1980年代のアメリカン・ロックの詰め合わせとなっていた。

曲間のMCでは、早くも名前を覚えたファン達から


「リナー!」


と声がかかる。

その度に莉奈自身も嬉しくなり、笑顔で手を振って応える。


中には


「カレシいるの〜!?」


といった質問も飛び。

ベースのマッキーが


「マネージャー通してください」


と代弁し、会場の笑いを誘う和やかな時間が流れる。


洋楽を唄うことになり、学校で英語科目が得意ではなかった莉奈も最初は自信を持てずにいたが。

不思議なことに、音楽のリズムとメロディに併せると意外なほど頭に入っていく。


特にロックと言っても、マッキーの選曲する`80年代のアメリカン・ロックは。

派手な演奏の中でも芯となるのが哀愁を帯びたメロディラインであったり、切ない恋愛の心情を唄った歌詞内容であったりする為、令和を生きるティーン・エィジャーである莉奈にも共鳴出来ていた。



ライブは終盤に差し掛かり、曲目はジャーニーの

「セパレイト・ウェイズ」

を迎えた。

本来はキーボードのウェーブがかった連打で始まる出だしを、アインのギターで表現。

直後の重くのしかかる低音は、マッキーのベースの真骨頂だ。


それまで笑顔で溢れていた莉奈も、マイクスタンドを前にして立ち、ただ一点を思い詰めたように見つめ。

声を絞り出すように、唄い出す………



Here we stand

僕たちは今ここに立つ 

Worlds apart, hearts broken in two, two, two 

世界は2つに、心も2つに分かれる 


Sleepless nights 

眠れない夜

Losing ground, I’m reaching for you, you, you 

居場所を無くした僕は 君のほうへ手を伸ばす 



(………………雄馬、見えてる?

あたしの、この姿が


聞こえてる?

あたしの、この唄が)



莉奈は。

薄暗く見えるライブハウスの客間に、雄馬の姿を探していた。



曲のサビの部分に差し掛かった時だった。



ライブハウスの入口のドアが開き、背の高い男が一人、入って来た。


スパイラルの髪。

細く長い脚に張り付いたダメージ・ジーンズ………………

 

全く、変わってはいなかった。



(………………雄馬!)


莉奈は釘付けになったが、メンバー達も気付いていた。


雄馬は。

ホップし始めるオーディエンスの合間で立ち尽くし、ステージを見つめている。


唄い続ける莉奈の頬を、涙がつたう。



Someday love will find you

 いつか 愛が君を見つけて

Break those chains that bind you

君を縛っている鎖を壊してくれるさ


One night will remind you 

ある夜 君は思い出すだろう

How we touched and went our separate ways 

僕たちが どうやって出会って別れていったのか



ベースを奏でながら、マッキーが手招きする。

雄馬へ、ステージへ上がって来い!とアピールしているのだ。


何かに弾かれたように人をかき分けながら、雄馬は進み。

跳び上がるようにステージへと昇った!!


その姿を見た観客達は………一瞬の静寂の後、雷鳴のような雄叫びを上げた。


「ユーマァァァー!!」


溢れる涙をそのままに唄い続ける、莉奈に寄り添うようにマイクへ顔を寄せ合い。

共に唄い始める雄馬!



If he ever hurts you 

もし彼が君を傷つけても


True love won't desert you 

本当の愛は君を見捨てやしないよ


You know I still love you 

分かってるだろ 

僕がまだ君を愛してるって



ライブハウスは一塊の爆弾と化したかのようなクライマックスを迎えた。

曲の終わりを雄馬のシャウトが締めくくる。


万雷の喝采を受けながら。

ステージの真ん中で、涙の莉奈と雄馬は抱き締め合う。

それをメンバー達が取り囲み祝福する。


ユーマ!

ユーマ!

リーナ!

リーナ!


永遠にカーテンコールが続くかに思われた夜だった。



続く


〈永遠のカーテンコール・完〉


🎁GEKKO様贈呈

再会を果たした莉奈と雄馬


※文中の団体・組織名及び人名は実在するものと一切関わりありません

画像アプリ;

Gemini

Special Thanks;GEKKO様