県コンクール当日が、やって来た。
烈貴達◯✕高校吹奏楽部一行は、地区コンクール時と同じ大型バスに乗せられ。
会場へと向かっている。
70kmに及ぶ、長距離ドライブ。
午前10時に一校目の演奏を開始するスケジュールに合わせる為、その日、学校への集合時刻を6時半とし。
出発を7時、途中から高速道路へ乗った。
バス搭乗早々居眠りを始める部員もいる程、皆は意外とリラックスしていた。
かつて万年銀賞が普通だった彼らにとっては地区コンクールでの金賞受賞までが緊張のピークであり、県コンクール出場は言わば"想定外のボーナス”といったところであった。
これが強豪校ともなれば、むしろ"これからが本番”とばかりに兜の緒を締めるところであろうが。
◯✕高校吹奏楽部員達は結果など気にせず、今回はチャレンジ精神そのままに向かう県コンクールである。
「わぁっ!
海だ、海!!」
高速を走って数十分経った頃、部員の一人が騒ぎ出す。
「え?
あ、ホント」
「うわっ、海」
皆一斉に片側の車窓へ顔を乗り出す。
高速道路は海沿いに入っていた。
眼前に広がる紺碧の夏の海原の風景は、ところどころ小さな白波を見せながら高速のスピードで流れる。
烈貴と美葉は既に、その夏での"海”は経験済みなので皆程は感動はしない。
ただ………
あの時の甘いひと時を思い出し、互いに顔を赤くする。
隣り合わせで座った手と手を握り合う。
二人にとって、この夏は忘れることの出来ない思い出となっていた。
烈貴には。
生まれて初めて女性の温もりとともに、胸の高なりというものを知る、熱い夏となった。
美葉にも。
それまで意識もしなかった、男性への恋慕の感情が生まれて初めて芽生え。
更に幸福にも想い叶った夏だった。
毎度、部活後の駐輪場での"蜜月タイム”に浸ってから帰宅した後。
それぞれ二人は家族の目を盗みつつ、火照った身体を"慰める”時間も増えた。
烈貴は寝床で、美葉は浴室で……が主であった。
互いが互いを想いながらの、夢うつつ………
これは育ち盛りの10代という年齢相応の反応であって、とくだん取り上げる程のことでもない。
この二人が心身とも、健全に育っているという証しである。
しかし。
必ずしも"心”が健全に育っているかどうか?危うい少女も居た。
「………なんなの?
あのコ。
全然インスタ来ないじゃない!」
ここは美葉のクラスメイトの"一軍女子”リーダー、彩木愛香の自宅自室である。
愛香は夏休み前に、美葉に対しダブルデートを誘い。
地区コンクールで"負けたら”連絡をよこすようにと、一方的に要請していた。
だが実際、美葉達は地区コンクールで"負け”なかった。
なので美葉は愛香には連絡しなかった………それだけのことなのである。
しかし。
決して地頭のよろしいわけではない愛香は、自身の勝手で言いつけた案件さえも忘れてしまい。
ただただ、己の思惑にハマらない美葉を、いまいましく思い始めたのであった。
「そんなことよりさぁ」
ベッドで隣りに座る愛香のカレシ、陀威也(だいや)が愛香の肩を抱き寄せる。
「いいかげん、ヤらせてくれよォ」
強引にベッドへ押し倒そうとする陀威也を、愛香は足で強く押し返す!
床に倒れ込む陀威也。
「イテッ!!
何しやがんだヨォ!」
「ウッせぇな!!
んな気分じゃねェんだっての!!」
見下すような眼差しで睨みつける愛香。
欲求不満な陀威也。
「オレは愛香の何なんだョ!?
キスもさしてくんねェじゃんョ!!」
「だからウッせぇての!!
あの陰キャカップルの見学終わったら、考えてやるわ!」
愛香にとってカレシとは。
自分が一軍である為の最低限のアイテムでしかなかった。
互いに恋慕と愛情と尊敬で結ばれている烈貴と美葉カップルとは、全く以て、似て非なるもの………であった。
続く
〈健全な育成・完〉
🎁GEKKO様贈呈
県コンクール会場へ到着した美葉
画像アプリ;
Gemini
Special Thanks;GEKKO様
