県コンクール………関東吹奏楽コンクール県代表選考会の開催日は、8月10日となっていた。

県内の各地区コンクールを勝ち抜いた代表校達は、このステージで再び演奏を披露し。

再び金賞・銀賞・銅賞の評価を受け、更に県代表を選出される。

そして……B部門で、その映えある県代表になれるのは僅か四校だ。


地区コンクールを終えた翌日、7月最後の日曜日の部活はオフとなった。


美葉は、家族と海へ出かけるという。

美葉には三歳離れた中学一年の弟が居た。

その弟は磯釣り好きな父親と共に港湾へ行き、美葉は母親と一緒に別行動で水族館へ向かう予定らしい。


烈貴はホッとした。


海と聞いて、もしかして美葉の水着姿を先に家族へ披露されるのではないか?などと変な嫉妬心のようなものが沸いたのだった。

自分でも可笑しいと、バツが悪そうに笑う。

 

土曜日、コンクール会場から学校へ戻り。

片付けと反省ミーティングを終えての帰り際。

その気持ちを美葉本人に伝えたが、やはり声を出して笑われた。


「大丈夫、まだ水着買ってもないし」


美葉は少し、妖しげな笑みを浮かべた。


「先輩も。

我慢出来なくて他のコの水着見に、海へ行かないでね」


「………そ、そんなこと!」


烈貴は、美葉のブラウスの胸の盛り上がりに視線を落とす。


「他の女の子なんて………目に入るわけないだろォ!?」


「ホントにぃ〜?」


改めて烈貴は、そうした意味で自分が"前科者”であることを思い出し、脂汗を浮かべる。

普通に考えて、美葉が………莉奈と自分のことを未だに疑っていたとしても、決して不思議ではないからだ。


だが。

莉奈とも、ケリは付けた。

今の烈貴が、美葉以外の女子に目が行かないのも正直な事実であった。


美葉も………それがわかっていながら、カマをかける仕草をしてみた………といったところであった。


「ホントだって………!」


ワザと背中を向け、ほくそ笑んでみせる美葉に、烈貴は慌てて駆け寄る。


「今日の結果も………美葉ちゃんが居てくれたからこそだ。

何もかも………俺にとって、美葉ちゃんは特別なんだよ!!」


美葉の期待通りに、烈貴は背中から抱き締めてくる。

耳元に、烈貴の熱い息がかかる。


「好きなんだよ………美葉ちゃんが………たまらなく………」


後は言葉にならない。

これまで幾度となく、口づけを交わした仲であっても。

まだ伝え切れないものがある。


烈貴が、美葉の髪をかき上げて首筋から耳たぶへ口づけの雨を降らせる。

片方の手は、美葉の腰から腹部を這う。


切なそうに瞳を閉じる、美葉。


「あん………まだ、明るいのに………」


お腹の奥から、何かキュンとくる。

同時に身体が熱くなる。

それは、夏の暑さのせいではない。


烈貴の両手が……いつかのように。

膨らみを撫で始めた。


「好きなんだよ………美葉ちゃん………」


耳たぶを唇で甘噛みされながら、熱い息で繰り返し囁かれ。

美葉は、たまらなくなる。


「う………ん………」


崩れ落ちるように力が抜け、背中から身を任せる。


疑う気など、一切無い。

ただただ………烈貴の愛を確かめ、満足する快感に酔いしれたかった。


(私って………ズルい)


烈貴の手で、ブラウスのボタンを外され。

素肌に触れられても。

拒みはしなかった。


夏休み中の夕暮れの駐輪場は、他に誰も居なかった。



続く


〈可怪しな嫉妬・完〉


※文中の団体・組織名及び人名は実在するものと一切関わりありません

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