7月最後の土曜日が、烈貴達の地域である県央地区の吹奏楽コンクール本番の日だ。
この月、烈貴の身にも様々なことが起こったが。
集中力を切らすことなく練習に打ち込めたのも、ひとえに美葉のおかげであった。
烈貴は幸運だった。
美葉は彼女となり自分の気持ちを受け止めてくれ、安らぎの源で居てくれたのは勿論。
同時に部活では"尊敬する後輩”として烈貴をリードしてくれた。
美葉自身も、烈貴とカップリング出来たことで気持ちに安定が生まれ。
これまでに無く適度にリラックスした状態の続いていることが、本番を見据えるエネルギーとなっていた。
吹奏楽部全体を見渡すと。
当初、不安定な要素が課題となっていたフルート・ピッコロのパートが、木管パートでの音合わせを重視する練習に切り替えたことにより格段に安定感を増していた。
さしずめ、部長の前田が当初懸念していた"メンタル面”での問題を解消した結果を出したかと言える。
吹奏楽もそうだが。
音楽の演奏というものは、つくづく「体力」「精神力」である。
この二つが伴わない限り、長時間に渡る正確な楽器操作や音出しは不可能だ。
そうした意味では競技スポーツと同じと言えるだろう。
ただ、聴きに来るオーディエンス達からはステージ上に居る演奏者達の、そうした苦労はビジュアル的には見えて来ない。
それがスポーツとの違いと言える。
「今日は、ここまで!」
「お疲れ様でした〜!!」
全体通し練習の毎日が続き、指揮台の渡辺も、部員達も。
連日、汗びっしょりで部活を終える。
本番は目前なのだ。
「ウワッ暑ッ!!
………夜だってのに、全然気温下がんねぇじゃん」
校舎を出た途端、外の熱気がムワッと二人を包む。
顔をしかめる烈貴の横で、美葉が手の平をウチワ替わりに扇ぐ。
更に美葉は、ブラウスの襟元に付いているリボンを外した。
「……こんなの、暑い時なんて要らない!
けど、デザイン可愛いから。
あった方がいいかなとは思うけど」
リボンをカバンに仕舞うと、今度はブラウスのボタンを襟元から三つ目まで解放する。
烈貴の目に………美葉の胸の谷間の、ホンの端っこが映る。
肌が白い。
ゴクリと、唾を飲み込む烈貴。
「………美葉ちゃん。
今度、海行く時………水着、持って来てね」
声が上ずる烈貴を、イタズラっぽい笑みで睨みながら美葉は言う。
「先輩、エロいこと考えてるぅ?」
「あ………いや、そうじゃなくて」
慌てる烈貴に、澄まし顔で応える美葉。
「いいよ!
ただし………買う時、先輩も一緒に来て。
選んで貰うから」
「ええ〜!?」
意外な応えに、更に慌てる烈貴。
女の子の水着選びに同行………!
漫画の世界か!?
「私さぁ。
小学校以来、水着来てないんだ。
体型も全然変わったし………太ってるから。
見た目、細く見えるのがいいな」
美葉のような普段、真面目そうな雰囲気の女子でも。
考えることは考えてるんだな〜と、烈貴は変に感心してしまう。
しかし。
「けど、この夏はもう、間に合わないかな。
これからコンクールもあるし、終わって8月になるとクラゲ出てるから。
…………残念ながら、来年までお預けね」
小悪魔の様相で、烈貴の"下心”を翻弄する美葉。
本当は海で泳ぐなんて、どうでもいいんだ。
美葉ちゃんの…………
「?」
いきなり背中から烈貴に抱きつかれ、ビックリする美葉。
暑さを忘れ去る。
首筋に顔を埋める烈貴を、あやすように呟く。
「………汗臭いでしょ?
フフ……大丈夫?」
烈貴は無言で、美葉の匂いを嗅ぎ続ける。
首筋に伝わる吐息が。
くすぐったさとは違う感覚を美葉に感じさせる。
「ん………」
美葉の腹部に回していた烈貴の両手が。
次第に上がっていき…………
膨らみの下部を、擦り始める。
(あ………これか)
美葉は察する。
烈貴が、少し呼吸を乱しながら耳元で囁いてくる。
「………美葉ちゃん………好きだよ………」
駐輪場手前の、通路に居る二人。
「………誰か、見てないかな?」
そう言って美葉は、首を回し。
烈貴と唇を重ねる。
舌が入ってくる。
美葉も、それに応える。
美葉の舌は………小鳥のように柔らかかった。
烈貴の両手は、変わらずに膨らみを撫で続けていた。
一旦、唇を離した美葉が。
声を密やかに囁く。
「………来年の夏の、お楽しみにしてて。
磨き、かけるから」
美葉と頬を合わせながら、烈貴は呟く。
「………痩せないでね、このままがいい………」
胸に烈貴の両手を感じながら、クスッと笑う美葉。
再び唇を合わせながら、二人は真夏の夜のひとときを過ごすのであった。
続く
〈真夏の夜の夢・完〉
※文中の団体・組織名及び人名は実在するものと一切関わりありません
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