この夏も、暑くなりそうだった。


「俺の頃は、学校にクーラーなんか無かった!

扇風機も無かった!!」


たまたま音楽室に冷房が入ってなかった日があり、汗だくだったことを烈貴が家でボヤくと。

父・正和お決まり、有無を言わせぬ

"独演会”が始まった。


登下校時に親が車で送迎……というのがスタンダードとなっている現在の学校の実状を聞いた時も。

"待ってました”とばかりに正和は


「ウチは絶対そうはさせない!!」


と、高校入学した4月で16の誕生日を迎えた烈貴に原付免許を取らせ、バイク通を"強要”したのであった。


「親は子供の"お抱え運転手”ではない!

VIPか!?

学校なんてのは自分の脚で通うのが当たり前だッ!

バイクが嫌なら歩いて行けッ!!」


当初、免許を取る前までは「バス通」だった烈貴であったが


(この人に言ってもムダだ………)


と早々に諦めた烈貴なのであった。

バスは"自分の脚”ではないのだから………


この件をクラスメイトにボヤいても


「昭和ガチ勢だね」


「博物館行き確定かよ」


とか、からかわれるだけであった。


そんな絶望の中スタートした、烈貴の高校生活であったのだが。

当初いやいやながら跨がり始めたRG50Eも自分の手足となって来てからは、周りの生徒の持ち得ない「自由への扉」として少しずつだが認識するようになった。

何より、平日・休日問わず自分の行きたい場所へ何時でも手軽に行けるのだ。

登下校時に苦も無くチラッとコンビニへ………なども可能である。


そうした意味では、後になり内心、父親へ感謝した烈貴なのであった。


「バイクは楽しいだろォ!?」


ガレージで愛機400ガンマをイジりつつ、満面の笑みで語る正和に対し


「………いや、特に?」


とポーカーフェイスでうそぶく烈貴ではあったが、父親にはお見通しであるのだった。



烈貴は健全に育っていた。


17歳にして、自分の両親を

"社会の歯車の一つでしかない”

と悟っていた。

更に父も母も、自分限定の"常識”=マイ・ルールを押し付けるだけの存在と認識していた。


妹の茉莉は優等生であるだけでなく、両親始め大人達のウケも良かった。


(よく、我慢してられるな)


などと、烈貴は半ば尊敬、半ば呆れながら妹を見ていた。


高校を出たら同時に家も出たいと考え始めた。

進学なんてしてまで、親に借りを作りたくない……………烈貴は就職を希望した。


「家庭も学校も、俺を縛り付ける牢獄だ」


両親を見れば、自分の将来に"結婚”の文字など絶対思い浮かばない。

異性に対しても、そう。

ありのままの自分を受け入れたかに見えた莉奈にすら、縛られそうになった。


自由になりたい………………


烈貴は強く願うようになった。



だが。



そんな、もがき苦しむ自分に。

等身大で並走しようとする存在が現れた。


それが美葉だった。


美葉は、自分に


「過去は忘れ、共に新しい道を歩く」


ことを提言した。


それは、烈貴が初めて描くことの出来る

"未来”へと繋がって行くのであった。



「………このバイク、二人乗れればいいのに。

でも、ダメなんだよね」


部活を終え、駐輪場に烈貴と居る美葉が。

RG50Eのシートを人差し指でなぞりながら呟く。


「そうそ、一種の原付だからね。

そもそも俺も自動二輪の免許も無いし」


「自動二輪?」


「そう。

二種原付以上、普通自動二輪とかの免許があれば、俺も二人乗り用バイク乗れるんだけど」


「もし、そうしたら………………」


美葉は、小首を傾げながら烈貴の眼を見つめる。


「………私を先輩の後ろ、乗せてくれる?」


烈貴は、このポーズの美葉に弱い。

可愛さが、いつもの数倍マシマシなのだ。


(普通自動二輪免許を取ろう)


そう烈貴に決心させたのは、そんな

"不純であり、且つ純粋”な

動機なのであった。



続く


〈自由への扉・巻〉


※文中の団体・組織名及び人名は実在するものと一切関わりありません

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