セルピエンテの狙いは、文字通り恐ろしい程の単純性を伴うものであった。

人質を虐殺する………

そのことにより"6体目”のゲリラ式戦闘ヒューマノイドを誘き寄せ、コンプリートさせる………


彼には人命の尊厳という概念が欠如していた。


麻衣という思わぬ邪魔者が入り多少予定が狂ってはいたが、彼の目的達成には障壁とまではなり得ないとタカをくくりながらほくそ笑んでいた。


イスロ戦場型戦闘ヒューマノイド40体。

その銃の引き金にかけられた鉄の指が、一斉に引かれた!!


ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!!!


40丁ものM4A1機関銃一斉掃射の放つ炎と硝煙は辺り一面を全て覆い尽くす。

火の弾となり放たれる天文学的な数の銃弾の雨。


麻衣は叫んだ!


「伏せて!!!」 


悲鳴で覆い尽くされた集団に、有らん限りの声で繰り返す麻衣。

エリック=ティーチャー、キッド三人衆も飛び出したが、流石にそれだけの銃弾は庇い切れるものではなかった。


硝煙に覆い尽くされた現場は、状況の見えない時間が続いた。


相当数の銃弾を撃ち込み、望み通りの成果を期待したセルピエンテは。

PCの項目を act から inactivate へ変更し、一旦、自軍戦闘ヒューマノイド達の銃撃を停止させる。

彼は、眼前に血肉にまみれた死骸の転がる光景を楽しみに硝煙の晴れ間を覗き続けた。



硝煙は晴れた。


しかし。


そこに広がっていたのは………

セルピエンテの期待していた光景ではなかった。


銃撃を受けたはずの人々は、全員無傷で地面に腹這いになり伏せている。

その中に交じる麻衣は一人、立膝の姿勢でセルピエンテを見つめ指さしている。


「………な………何だ?

一体、何が起きてるんだ!?」


驚愕するセルピエンテは、俄には状況を信じることが出来ないでいた。


彼を指していた麻衣の指先は、そのままイスロ戦場型戦闘ヒューマノイド達の方へと向けられる。


セルピエンテが、そこで見たものは………

「!?」

40体の戦闘ヒューマノイド達の向けた銃口が、全て上………天空を向いている情景だった!

ただただ呆然とするしかないセルピエンテ。

ニヤリと含み笑いを見せる麻衣。


事前に軍用トラック内で麻衣の行っておいた"イタズラ”とは、以下の通りである。


麻衣は元からセルピエンテという男が約束を守る人間とは考えていなかった。

そして PC 内戦闘ヒューマノイド・オペレーションシステムのディレクトリ項目で

〈attack target〉(攻撃目標)を選び。

次いで目標選択を

people (民衆)から aerial drone (空中ドローン) へと変更した………それだけのことであった。

今時の兵器で攻撃目標に空中ドローンを設定していないものは無いはず………麻衣の確信は大当たりで、システム適合のコマンドとして含まれていた。

実際にD大キャンパス上空に空中ドローンが飛来しているわけではないが、コマンドに従う動きしか出来ないイスロ戦場型戦闘ヒューマノイド達は空中ドローンの姿を探し求め、空へ向かい銃撃を続けるしかない…………

麻衣の妙案による、この作戦は見事に功を奏したのである。


嘲るようにVサインを見せつける麻衣に対し。

額に脂汗を浮かべ、次第に屈辱と怒りの感情が湧き始めるセルピエンテ。

「………く……くく……この、小娘がぁぁぁ!!


怒りの矛先は、殴られて横たわったままのデビッドへ向かった。


「貴様ァ………

あの小娘にたぶらかされたな………

この場で処刑だ!!

セルピエンテはPCをトラックの荷台へ投げ、持ち換えた機関銃の銃口をデビッドの鼻先に向ける。
「ヒィィィィィ」


顔面蒼白で怯えるデビッド。


麻衣の顔色も変わる。


「デビッド!!」


デビッドを助ける為に飛び出す麻衣。

しかし、距離が有り過ぎる。

間に合わない!!


セルピエンテが引き金を引いた。


ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!


至近距離で………しかも人間一人に対するには余りある程の銃弾が撃ち込まれた。


愕然と膝をつく、麻衣…………


…………ところが!


覆い尽くした硝煙が晴れ、そこに出現したのは。


死を覚悟し震えたデビッドの前に立ちはだかる、金色の髪をなびかせた漆黒の騎士…………

華裏那だ!!


「………ろ、6体目!?」

目玉も飛び出さんばかりに愕然とするセルピエンテ。

華裏那の纏う装甲は、放たれた銃弾全てからデビッドを守り切っていた。
ニヤリと笑みを浮かべ、華裏那は渾身の前蹴りをセルピエンテの腹部へと突き刺す!
「ぐあぁ!!!」
セルピエンテは海老反った姿で宙に舞い、機関銃ごと数十メートル後ろへ吹き飛ばされた。


「お姉ちゃん!!」


デビッドを救った華裏那に声をかける麻衣。

間髪入れず指示する華裏那。


「麻衣!

みんなを安全な場所へ誘導して!!」


「わかった!」


皆が落ち着いて大学3号館内へ入るよう、誘導する麻衣。

そこへイスロ兵達が近づかぬよう、キッド三人衆とエリック=ティーチャーがガードする。

栄太は機関銃を、山本君は鉄パイプを再び手に取る。


麻衣は叫ぶ。


「栄太も!

山本君も!

二人とも中に避難して!!」


栄太はキッと目を向ける。


「麻衣に助けてもらってばかりにはいかないよ!

俺達も闘うんだ!!」


言っている側からイスロ兵が銃撃して来る。

それを腹這いになり、かわしながら銃を構える栄太!

銃の重みにも慣れてきた。

銃弾を切らし、慌てるイスロ兵に向かい山本君が突撃をかける!

「突きィ〜〜〜ッ!!」


喉元に山本君の鉄パイプが突き刺さったイスロ兵は、苦痛に顔を歪め倒れ込む。



栄太と山本君だけではなかった!


「うおおりゃぁぁぁ〜!!!」

現場に転がっている機関銃を引ったくり、振り回してイスロ戦場型戦闘ヒューマノイドをなぎ倒す女子生徒。

由美香だ!

上を向いたまま立ち尽くす状態で止まっている戦闘ヒューマノイド達は、由美香が振り回す機関銃で頭部を強打すると、いとも簡単に倒れて行く!

まさに鬼神のような形相で機関銃を振り回し続ける由美香。

そして……とうとう40体全てをなぎ倒してしまった!!


「オッシャー!!」

天を仰ぎ、勝利の雄叫びを上げる由美香!

しかし……


「Stop right there!!」

(そこまでだ!!)


振り返ると………

そこにはイスロ兵が怒りを露わにして由美香の背中へ銃を突き付けている。

「チィ………キ◯タマでも蹴ったろか?」


兵士の股間を狙って、背中越しに由美香が脚を振り上げようとした時。


「そこまでだ!」


ふと見ると………

そのイスロ兵の背後を、拳銃を構えた剣持刑事37歳と警視庁機動隊SATが取り囲んでいる。

これにはイスロ兵もたまらず
"Hands up!”

銃を捨て、手を上げるしかなかった!


「ダァリ〜〜〜ン♡

こわかったぁ〜〜泣!!」

剣持を見つけると、胸に飛び込み泣き崩れて見せる由美香。

つい今程まで

"キ◯タマ…………”

などと鬼神の形相だった由美香の、余りの豹変ぶりに半ば呆れながらも安堵の剣持であった!


〈燃え盛る中央広場・完〉


※文中の団体・組織名及び人名は

実在するものと一切関わりありません

キャラクターアプリ;Picrew.me ChatGTP

Gemini