イスロの参謀"毒蛇”セルピエンテ・ペドロサ率いる一行の乗る揚陸艇は。

ハワイ、マウイ島のカフルイ港 に停泊中である。

警備の厳格なオアフ島、ハワイ本島の港よりも比較的小規模で。
米軍が管理する施設ではなく、事前に米沿岸警備隊や港湾当局への申請と許可さえ通せば米海軍を含む他国の軍艦さえも寄港することは可能であり、なおかつ補給に適している為。
表向きは輸送船として登録済みのイスロ揚陸艇は、この港を"常宿”としている。

セルピエンテは、しびれを切らしつつあった。
燃料も食料も既に補給を済ませ、直ぐにでも日本へ攻め込みたいところなのだが………
日本近海の太平洋に於ける冬の天候は思いのほか厳しいものであった。
冬型の気圧配置が非常に強い場合、風力も強く波高は3.5m、あるいはそれ以上に達することもある。

砂浜に乗り上げる構造になっている揚陸艇は船底が平らな平底船(フラットボトム)が多い為、高波にはめっきり弱く。

強風下や荒れた海面では船体が大きく揺れ、航行も制限されてしまうのだ。

セルピエンテが錨を上げようとする度に日本付近は強い冬型の気圧配置となり、足踏み状態となっていた。

こんなことなら、急襲の時期をずらすとか本部は考えなかったのか?

セルピエンテは苛立ちを隠せない。


(日本の事なら、何でも知っている。

私は日本通だ!!)

そう息巻いていた総帥ドメニコを思い出す。


「フン、な〜にが日本通だ!

肝心なもんを見過ごしやがって。

テメェの日本通は食いもんだけだろうが!?」


吐き捨てるセルピエンテ。


既に彼にとって、この作戦は指令ではなく。

もはや私闘であった。

自分の目論見の裏をかき。

一部とはいえ部隊を犬死にさせた、ゲリラ式戦闘ヒューマノイド達。

その屈辱はセルピエンテの経験上、初めて味わうものだった。

だが例え自分達の戦場型戦闘ヒューマノイドが能力でハンディを負うとしても、残り40体という圧倒的な数量でアドバンテージを持つとセルピエンテは確信していた。


「次の週には気圧配置も変わる。

その時がテメェら、ゲリラ式戦闘ヒューマノイドの最期だ!!」

手負いの蛇は執念深い。




真行寺宅。
居間の炬燵を、まるで自分の城であるかのように"占領”するニャーミー。
さすがはニホンコタツネコだ!
それを見て麻衣は、童謡の一節を口ずさんでいる。
「♫ネ〜コは炬燵で丸くなる〜〜」

その麻衣に、ニャーミーが何かしら話しかける。
「ニャンニャン、ニャオニャオ」

最近、麻衣は。
ニャーミーが何を話しているのか、理解出来るように思えて来ていた。

「なになに?
炬燵に入らなくても丸いネコは、どうすればいいかって?」

「ニャン!」

あまりの可愛さに理性を失い…………
思わず炬燵からニャーミーを取り上げ、激しく頬ずりしまくる麻衣!
「ニャーミー可愛い〜ッ!!」

「フギャフギャ!
ニャ〜オ〜〜〜〜!!」

せっかくの炬燵での至福の時間を邪魔され、機嫌を損ねるニャーミーであった。

〈真冬の受難・完〉


※文中の団体・組織名及び人名は

実在するものと一切関わりありません

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