「わぁぁぁ〜!!キレイ♫」

街の華やかなイルミネーションに、麻衣は歓声を上げる。

12月も半ばになる週末。
麻衣と朱莉は、夜の街にイルミネーションを観に行くがてら、クリスマス・プレゼントを選びに来ていた。
もちろん………お互いの"お相手”への、だ。

この週末は東日本の太平洋側も雪がチラつくような予報だったが、それもホンの少し当たった。
フワフワと、まるで妖精のように小さな雪の粒が舞う。

「ホントね!
イルミネーションの灯りが雪をキラキラと照らしてる!
まるで、おとぎの国に居るみたい」

うっとりしながら朱莉も、辺りを見回す。


「………プレゼント、山本君は好みがハッキリしてるからいいよね!
選びやすそうじゃない?」

麻衣が言えば。

「う〜ん、でも山本君。
自分の趣味の物ってある程度"制覇”しちゃってるから。
もし既に持ってたらバッティングしちゃうでしょ?
だから、敢えて違うジャンルがいいかな?って」

朱莉も、それなりに悩んでいるようだ。

「そこを行くと栄太なんか、全く好みがわかんないから。
写真部入ってるけど、カメラなんか高そうで予算オーバーになりそう」

そう言って麻衣は舌を出す。

「麻衣、有りがちだけど。
自分にリボン付けて
"わたしをプレゼント♡”
なんて、やってみたら?」

イタズラっぽく笑いながら言う朱莉に、麻衣は赤くなる。

「やだ〜、何それ〜!
恥ずかし過ぎる〜♡」

その時、麻衣の胸の内は。
自分が人間のままだったら………と、少し影を落とした。

(麻衣は俺の女だ!)
そう言いながら、夢中で闘ってくれた栄太。
麻衣の気持ちは、そんな栄太を友達以上恋人未満から卒業させていた。
本当なら、自分の全てをあげても………いいとさえ思った。
でも………今は
そう伝える自信が無い。
(早く、人間の身体を取り戻したい)
その為にも、イスロとの闘いを乗り越えなければならない………!
そんな麻衣の想いが、思わぬ独り言を口にさせてしまう。

「栄太………こんなわたし、好きになってくれるかな……」

「え?」

朱莉が顔を覗き込み、笑う。

「フフ……今更何言ってるの?麻衣。
あなた達、とっくにカップルじゃない」

「………え。
そ、そうだね、へへ」

麻衣も笑ってみせる。

「山本君、優しそうだし。
頼りがいありそうで、いいよね朱莉は」

「栄太君だって、麻衣のことを思って。
不良に立ち向かったんでしょ?
スゴい男らしくてカッコいいじゃない」

「へへ……誤解だったけどね」

朱莉はニッコリ笑う。

「………お互い、愛されてるね♫」

朱莉は、本当に良い友達だ………
いつも、自分を前に向かせてくれる。
自分を信じることを思い出させてくれる。

「あ……雪、止んだ」

朱莉の言葉に、麻衣の見上げた夜空は。
薄い雲の間から星が瞬いていた。



………こちらは、別のイルミネーション通り。

「へ、へ〜クション!!」

先程からクシャミが連発している、男二人組。
栄太と山本君が歩いている。

「御屋形様。
今宵は冷えまするな」

「ああ、さっきまで雪まで降ってたし。
う〜、ぶるぶる」

「そう言えば、もうすぐ赤穂浪士の討ち入りの日にござりまする。
その日も江戸に雪が降ったとのことにござりまする」

すかさず日本史ネタを入れてくる山本君に。
(この男ほどクリスマスなどと言う、西洋ネタの似合わない奴はいないだろう)
と内心、栄太は思った。
ともすれば、この通りのイルミネーションさえも
"エレキテル”(※平賀源内で検索)
などと言いかねないだろう………
「さてと、クリスマス・プレゼント。
何がいいかな……
朱莉は帰国子女だから、山本君も大変そうだね。
ハンパなクリスマスはNGっぽそうだし」

「それがしも当初は、かように思っておりましたが。
姫様は意外と質素堅実な御方にござりまする。
先日の新潟旅行に於きましてもそのようでしたが、常々気を使ってくださりまする」

「そっか〜、確かに朱莉って優しい子っぽいよな。
いいよな〜〜!朱莉、キレイだし!!
ビックリしたもんね。
いつの間に山本君がゲットしちゃってたし!」

「おそれながら、御方様に失礼にござりまする。
御方様こそ、まっこと、凛々しく美しき方にござりまする。
しからば、御屋形様がお羨ましきこと自明にござりまする」

栄太は………
先日の雨の夜を思い出していた。
あの頃、自分はつまらない意地を張って麻衣を避けていた。
その時
(傘に入れて)
と初めて自分に甘えて来た麻衣を。
本当は、これまでになく可愛いと思った。
でも自分も傘を持ってなかったことが悔しくて、逆に冷たくしてしまった。
それでも………足を挫いてまで追いかけて来てくれた麻衣に愛おしさが溢れ、思わず抱きしめた……………

歩きながら栄太は、そんなことを思い出してた。
しかしハッと我に返り、山本君に話題を振る。

「ねえねえ、朱莉とは、どこまで行ったの?」

「ハ?
どこまでとは?」

「ホラホラ、男と女って、いろいろあるじゃん」

栄太はニヤニヤしながら山本君の返事を待っている。

「だって、新幹線まで使って遠出デートして来たんだろ?
何も無いワケないよね〜」

ただただ栄太はネタとして、山本君をからかったつもりだった。

山本君は暫し黙った後、少々赤面しながら答える。

「……その、遠出参りましたる時には、何もござりませんでしたが」

栄太は予想外の答えに少し驚く。

「……え?
じゃ、遠出デート以外で何か?」

「ハ、その………我が城へお越しになられた際、姫様が……」

「ひ、姫様が!?」

栄太は息を飲んで、まるでTVリポーターのインタビューのように次の答えを求める。
………まさか?

山本君は赤面しながら。

「ゴホン………姫様より。
せ、接吻を賜りまして、ござりまする」

「………ええ!?
せ、接吻て?」

「ハッ………
チューにござりまする」

栄太は気が動転する。

「ぬ、ぬぁにぃ〜〜〜!?」

まだ自分は麻衣とは、そこまでも行ってないのに!

「え!?
ど、どんなシチュエーションで!?」

「ハッ、姫様御帰りの折、駅までお送り申し上げた道中でござりました。
突如、姫様よりチューを賜りましてござりまする」

「え!?
あ、朱莉の方から!?」

「ハッ、左様にござりまする。
夕焼けの、赤々とした宵の口にござりました」

朱莉、意外!積極的〜!!
栄太がショックを受けたのは、それだけではなく。
先を越されてしまったことだった!!

(山本君、只者ではない!)

正直、恋愛面に於いては山本君をタダのヲタクだと侮っていた栄太だった。

「くそぉ!
お、俺もやるぞ〜!!」

悔しがる栄太に、山本君は。

「御屋形様!
それがしも、御世継ぎの御生誕を心より御祈り申し上げておりまする!!」

栄太はズッコける。
まだ"世継ぎ”というレベルではない!!

………もはやプレゼントのことは、一先ず何処かへ飛んでしまっている男二人であった!

〈若いって、いいな・完〉

※文中の団体・組織名及び人名は
実在するものと一切関わりありません
キャラクターアプリ;Picrew.me ChatGTP
Gemini
画像アプリ;You Can Perfect