…………剣持博己37歳刑事がアパートで一息ついていた夜、田舎の実家から電話が来た。
母だった。
「わぇ〜(おい)、博己、おまえ正月帰るがぁろ?」
実家から来る電話の内容は決まって
正月は帰るのか?
盆は帰るのか?
だった。
仕事柄でもあるのだが、ここ数年剣持は北陸の実家に帰省していなかった。
「……あぁ、まだわからんども(わからないけど)」
いつも、そう言ってお茶を濁していた。
母の話だと前日に初雪が降ったという。
剣持の田舎では11月後半なら普通に初雪の時期だが、概ね初雪というのは大して積もらず、一旦は消えてしまう。
たが今回は"いい降り”だったらしく一面真っ白だという。
「早よ、嫁もらえて。
おまえもイイ齢んがすけ
(早く、お嫁さんをもらいなさい。
おまえもイイ齢なんだから)」
実家の親から来る、こうした電話を剣持は毎回"通過儀礼”のように流していたが、この時は何故か?
由美香を思い出していた。
冬が近付くにつれ、由美香は剣持の田舎へ行ってみたい!とせがむようになった。
自分は行ったことは無いが、友達がスノーボードに行った時の画像を見せてもらっていて「ホワイト・クリスマスを過ごしたい!」という。
最近は暖冬だからクリスマスに雪の無いこともあるよ、とも言ってみたのだが「それでもいい!!」らしい。
とはいえ、由美香はまだ18歳の高校生。
仮に遊びに行く程度ならまだいいとしても、必然的に泊りがけとなるだろう。
そうなると由美香の御両親にも了解を頂かなくてはならない。
そして、剣持の実家の親にも由美香を紹介しなくてはならない。
剣持の田舎では18歳の娘でも立派に"婚約対象”として見られてしまうこともあるのだ。
そうしたことで、またしても剣持は頭を抱えることとなっている。
(俺が、もう少し若ければ…………)
年甲斐もなく、リア充の悩みというものを実感する剣持であった。
…………同じく、もう一人悩める男子が居た。
浅田栄太だ。
最近、麻衣は何だか素っ気無い。
何か考えごとをしてる時も多く、以前は帰りも一緒だったが最近は
「お母さんの研究室寄ってくから」
と、毎度のように突き放されている感じがする。
確かに、まだ正式に麻衣のカレシとなっているわけでないので。
そのことに何か"物言い”する資格も無い気がして…………しかし、それでも栄太は悶々としてしまうのであった。
特に最近、クラスの山本磯之進と島崎朱莉が付き合い始めたのがわかり、そのアツアツぶりは二人が新幹線に乗ってまで遠出デートをしたことが示していた為、栄太も焦りを感じていないのはウソになる。
「ダンナ様!先、越されてない?」
等とクラスでからかわれたりもする。
(よし!今度のクリスマスへ、勝負をかけよう)

〈クリスマスへ向けた男子・完〉
※文中の団体・組織名及び人名は
実在するものと一切関わりありません
写真;HARIMA
キャラクターアプリ;Picrew.me ChatGTP
Gemini
画像アプリ;You Can Perfect

